2020年8月18日掲載 − 脱原発
ウソでしょ、寿都町

前回、ドイツの最終処分地選定部会(AkEnd)の締めくくりで、最終処分地の選定では最終的に地元に莫大な補助金を給付して、受け入れてもらうという言明があったことについて書いた。


その数日後、日本の北海道寿都町の町長が、高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地選定に向けた政府の文献調査に応募することで検討する方針を表明した。その理由として、それによって得られる最大20億円の交付金を挙げた。


正直、びっくりした。同時に、やはりそうかとも思った。


日本では2017年7月、経産省によって最終処分場の適地を地図上に示した「科学的特性マップ」が公表された。これは、核のゴミを地層処分する場所を選定するのに適した場所と、適さない場所の概要を日本の地図上で図示したものだ。それによって、選定においてどういった科学的特性を配慮するのか、そしてそれらの科学的特性を有する地域は日本国内でどう分布しているのかがわかる。


日本は基本的に、最終処分場の候補地を自治体から応募し、その後に詳細調査を行って選定する仕組みを採用する。自治体からの応募がなくても、国の申入れを自治体が受け入れれば、詳細調査を実施することができる。


詳細調査はその後、文献調査(約2年)、ボーリング調査などの概要調査(約4年)、精密調査(地層での調査坑調査、約14年)の順に行われる。自治体の調査受け入れを促進するため、最初の文献調査で最大20億円、次のボーリング調査などで最大70億円の交付金が支払われる。


ただこれまでは、自治体に候補地応募にアクセプタンスがなく、行き詰まり感が強かったといわざるを得ない。


そこに、北海道寿都町が手を挙げる。町長が、交付金目当てだと露骨に発言するのだから、政府としてはしてやったり。喜んでいるに違いない。


科学的特性マップによると、寿都町のある地域は最終処分地に適する緑色になっている。海に面しているから、輸送にも適しているという。


ところがだ。政府地鎮本部のサイトによると、寿都町の近くに黒松内低地断層帯がある。そして、そこには以下のコメントがある。


全体が1つの活動区間として活動する場合、マグニチュード7.3程度以上の地震が発生する可能性があります。また、その際には、断層近傍の地表面では、西側が東側に対して相対的に2−3m程度以上高まる段差や撓みが生じる可能性があります。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅がありますが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する確率が我が国の主な活断層帯の中では高いグループに属することになります。


ここでも、またびっくり。


そんな地域が、科学的特性マップで最も適地となる緑色になっている。ぼくがドイツで最終処分問題で取材してきた限り、そんな地域は最終処分地として考慮される対象になってはならないと思う。


最終処分場は、地層において広い範囲に渡って設置される。地層での処分範囲は、地上の最終処分場敷地以上にかなり大きい。その大きさは地上からは見えず、地層ではいくつもの自治体にまたがる可能性もある。その大きさを考えると、近くに活断層があるのは問題だ。地震で断層近くの地層が移動、隆起する可能性は否定できない。それでは、最終処分の安全を保証できない。


寿都町の近くには、泊原発がある。同原発の再稼動でも、原発敷地内に活断層があるかどうかが大きな争点になっている。


日本政府は、最終処分場の誘致で経済効果が150億円もあると宣伝している。そんなことがあるだろうか。それは、原発立地自治体を見ればすぐにわかるはずだ。原発立地自治体には、莫大な交付金が流れる。ただそれで、豊かになった自治体はない。最初はいいかもしれない。しかし長期的にはむしろ、必要以上に大きな公共施設などができ、その負担で財政破綻に追い込まれるのがオチだ。


日本政府のやり方には、長期的な視野がない。安全性について詳細な調査をしないまま、まず目先の金で自治体を釣り上げる。それは、札束で安全と住民の意思を払い退けて無視するのと同じだ。これまで原発を誘致してきた方法とまったく変わらない。


最終処分については、まず社会全体でじっくりと議論して、国内で最終処分することに社会全体の合意を得ることがまず先決だ。そして、候補地として可能性のある地域の科学的な分析を行う。それが、社会のアクセプタンスを得る大前提だと思う。


こうした社会のアプセプタンスを得る手順を経ずに、政治と金だけが先に動く。それで、社会がついてくるはずがない。


寿都町の町長は、「地元以外からの反対に耳を貸すつもりはない」ともいっているらしい。町長にとって、地元は自分たちの町でしかないようだ。でも最終処分の問題は、ある一つの自治体だけの問題では片付かない。さらに、何世代にも渡る問題だ。だから、社会全体と世代間の問題でもある。ある自治体とある世代だけのエゴで片付けてはならない。それだけ、慎重に取り組まなければならない。


そうしたことが、町長にはわかっていないらしい。町長は、目先の金しか見ていない。


もし町長が近くに断層があるので、最終的に候補地に選定されないことを見越して、交付金だけを受け取る算段なら、お見事だと思う。日本政府の政策上の欠陥をうまく利用している。でも町長は、そこまで考えていないと思う。


寿都町に同調して、今後応募自治体が増える可能性もある。ただそうなると、このまま何も社会的に議論することなく、最終処分場候補地が決められていく心配がある。それも怖い。


札束をチラつかせる日本政府といい、それに乗っかる町長といい、政治と行政は腐ってしまっている。そんな奴らに、最終処分地の選定を任せてはならない。


社会が全体として、それに抗議、抵抗しなければならない。それは、今のぼくたちの世代だけの問題ではないからだ。最終処分は、まだ生まれていない将来世代の問題でもある。

ぼくたちは、それだけ重い責任を追っている。それを自覚しほしい。


(2020年8月18日)
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最終処分地をどう選定するのか
最終処分と科学の役割
最終処分と民主主義
関連サイト:
エネ庁の科学的特性マップ公表用サイト
「科学的特性マップ」とは何ですか?(NUMO(原子力発電環境整備機構)のサイト)
黒松内低地断層帯(政府地震本部のサイト)
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