前回、最終処分は人工バリアと自然バリアによって二重に遮蔽して行われると書いた。最終処分が長期に渡ることを考えると、そのほうが安全を担保できる。人間がつくる技術は、長期間の処分に耐えることができないからだ。
それでは、自然バリアとして何が考えられるのだろうか。
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ゴアレーベン最終処分調査施設内地下約1000メートルの坑道 |
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たとえば核燃料を交換すると、使用済み核燃料は原子炉内にある燃料貯蔵プールに入れられる。それは、水によって使用済み核燃料を冷やすことと、使用済み燃料から放出される放射線を遮蔽するためだ。
それなら、水を自然バリアとして使うのがいいのだろうか。
答えは、残念ながら「ノー」だ。
原子力発電がはじまった当初は、放射性廃棄物は海に捨てればいいとの安易な考えがあった。実際そうして、放射性廃棄物が海に捨てられていた。
しかし、放射性廃棄物を入れた容器は、水によって腐食する。その結果、放射性廃棄物は水中に拡散してしまう。それでは、安全に処分したことにはならない。汚染された水をどう管理するのか。とても難しい。
また、水を大きな容器に入れ、その容器によって放射性廃棄物を覆い隠してしまうことも不可能ではない。しかし、水を入れる容器も人間がつくるものだ。最終処分の間に、その容器が壊れてしまうことも考えなければならない。
水以外に、自然バリアとして使えるものはないだろうか。それも、人間の技術を使わないで、そのままバリアとして使えるものでなければならない。
それを前提にすると、現在より安全に最終処分できる方法として考えられているのは、放射性廃棄物を地下の深い地層に埋めてしまうことだ。「地層処分」といわれる。
ここで、「最も安全」としないで、「より安全」だとしていることに注意してほしい。
これは、現段階で他の方法と比較してより安全だということだ。その方法であっても、100%安全だということを保証できるわけではない。さらに将来、何かより安全な方法がみつかるかもしれない。それが、地層処分が「より安全」だという意味である。
地層処分は、それによって地層を放射能に汚染させてしまうことになる。それは、将来世代に対する責任を考えると、とても心苦しい。しかし今の状況では、それがより安全で、地層処分とせざるを得ない。
(2020年6月23日) |