ドイツは、これまでの最終処分地の選定を白紙に戻した。それに代わって、選定を住民参加の形で行うことを決めた。最終処分地選定法継続法がその手法について規定している。
法律は、超党派の連邦議会内最終処分委員会によって作成された莫大な報告書をベースにしている。その委員会においても、住民参加を促進するため、何回となく市民ワークショップが開催された。最終処分委員会の協議は、小部会以外はすべて公開された。
行政側では、最終処分地の選定と最終処分を実行するドイツ最終処分庁が設置される。国家随行委員会という組織も設置された。国家随行委員会は、行政側と最終処分候補地住民の仲介役を務める。委員の三分の一は、一般市民から無作為に選ばれる。
法律は、最終処分地の選定を2031年までに終えるよう規定している。
選定プロセスの第一段は、ボーリング調査などの結果から適正地を大まかに絞り込む中間報告書の公開だ。今年2020年秋に公開される予定だ。報告書は、ボーリング調査などから得た地層データだけを元に、適正を分析。それに基づいて、第一段階の絞り込みが行われる。
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市民ワークショップの冒頭で話すアルビン最終処分長副長官 |
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中間報告書の公開を前に、2020年1月25日、最終処分庁で市民ワークショップが行われた。
ワークショップでは、これから住民参加を促すにはどうすべきか、情報を公開するにはどういう手段が適切か、これまでの情報公開は十分か、中間報告書にどういう情報が必要か、報告書はどういう書き方がいいか、その後に行政側と地域住民の間で開催される地方専門会議はどう行うべきかなどのテーマについて、参加者がラウンドテーブルに分かれて意見を述べる。
ラウンドテーブルは、全体で8つくらい用意された。1回に話し合う時間は20分ないし30分。それが終わると、参加者は別のテーマについて話すテーブルに移る。
最後に、テーブル毎にグループ長がテーブルで出た意見のまとめを発表する。
これは、連邦議会の最終処分委員会のワークショップから継続されている手法だ。ただこの手法では、ワークショップで得られた意見がその後実際にどの程度反映されたのか、市民にはよくわからない。それが問題。
今回の参加者は100人余り。そのうちの30%が関連の行政機関やメディア関係者、30%が環境団体などのNGO関係者、残りの40%が最終処分に関心のある一般市民という構成だった。
一般市民の中には、地下1000メートルくらいの地層で最終処分の適正調査の行われていたゴアレーベンで反対運動していた活動家なども参加していた。
行政側は、最終処分地の選定を政治的に判断しない、地層学など学術的に判断すると主張する。しかし、これまで政治的に騙されてきたと思っているゴアレーベンの活動家たちには、政府のやることが信用できない。
その溝は、とても大きい。
今回ワークショップに参加していた活動家も、政治を信用できないので、住民参加で最終処分地の選定などできるはずがないといっていた。
ただ、放射性廃棄物を国内で最終処分するのが大前提である。その意味で、これまでのように単に行政側のやることに反対しているだけでは、最終処分は実現できない。住民参加で最終処分地を選定するプロセスにどう関わっていくのか、反原発運動自体も考えて、対応しなければならなくなっている。
しかし、一旦失ってしまった信用を取り戻すのは難しい。一旦信用できなくなった者を信用するもの難しい。
ただこのハードルをお互いに乗り越えないと、これまでの二の舞となりかねない。
(2020年1月28日) |