2020年10月13日掲載 − HOME − 脱原発一覧 − 記事
最終処分には中間貯蔵が必要

前回、粘土層に最終処分する場合、中間貯蔵期間を長くしなければならない問題が発生することを指摘した。それは、使用済み核燃料が熱を発するので、十分に冷やしてからでないと、熱を逃がさない粘土層には処分できないからだ。そうでないと、熱が地層に溜まり、熱くなって危険になる可能性がある。


そのため、粘土層に使用済み核燃料など高レベル放射性廃棄物を最終処分する場合、まず高レベル放射性廃棄物を長期間中間貯蔵して、熱があまり発生しない状態になるのを待ってから最終処分しなければならない。


使用済み核燃料は、原子炉から取り出したばかりの時はまだ非常に熱い。原子力発電では、核分裂によって発生した熱を使って水を気化させ、それによって発生した蒸気でタービンを回転させて発電機を動かしているからだ。


使用済み核燃料は、まず原子炉近くにある貯蔵プールに入れて冷やされる。原子炉から取り出した直後は非常に熱く、容器などに入れることができない。まず貯蔵プールに入れ、水を循環させて積極的に冷やさなければならない。そうしないと、使用済み核燃料が高温となって、再び核分裂反応を起こしてしまう危険もある。


貯蔵プールに保管される期間は通常、約5年間。ここでは、水で冷やすということだ。


ただ、使用済み核燃料を貯蔵プールで保管できるスペースには限界がある。そこからも搬出しなければならない。そうしないと、燃料交換時に使用済み核燃料を入れるスペースがない。そのため、使用済み核燃料がある程度冷えたら、貯蔵プールから取り出して別の場所で中間貯蔵する。


ドイツの場合はその時に、使用済み核燃料を輸送・保管容器(キャスク)に入れて中間貯蔵施設で保管する。中間貯蔵施設は、大きな工場のホールのようなものだ。これを乾式貯蔵という。今度は、空気で冷やすということだ。


貯蔵プールから取り出した後も、使用済み核燃料をプールに入れて水で冷やすこともできる(プール式)。日本ではプールで使用済み核燃料を保管する期間が長いが、日本のような地震の多い地域では、プール式貯蔵は危険だ。地震でプールに亀裂が入ると、使用済み燃料を冷やすことができなくなる。


日本では、使用済み燃料のほとんどがプールで保管されている。地震国日本では、使用済み核燃料がとても危険な状況に置かれているといわなければならない。


なお中間貯蔵を乾式にするか、プール式にするかについては、すでに本サイトで議論しているので、その問題はその記事を参照されたい(中間貯蔵を乾式には、どうなったのか?)。


こうして見ると、わかると思う。中間貯蔵には、使用済み核燃料など熱を発する高レベル放射性廃棄物を冷やす意味がある。


最終処分場の地層が粘土層のように熱を逃がさい場合、できるだけ中間貯蔵施設で高レベル放射性廃棄物を冷やしてから最終処分しなければならない。その分、中間貯蔵期間が長くなる。


ただ中間貯蔵には、もう一つ重要な役割がある。


まず、最終処分場の立地場所を選定するまでに時間がかかる。たとえ最終処分場が完成しても、高レベル放射性廃棄物すべてを一度に最終処分することはできない。地層処分では、搬入坑は一つしかないのが普通だ。1日に搬入できる数は限られている。


そのため、高レベル放射性廃棄物を最終処分場に一つ一つ搬入するにも、かなりの時間がかるということだ。その間、高レベル放射性廃棄物を安全に保管しなければならない。


そのためにも、中間貯蔵施設が必要だ。最終処分は、中間貯蔵を前提としているということだ。


これらの要因を考えると、中間貯蔵に最低でも100年くらいかかるのではないかとまで想定されているのも不思議ではない。それなら、たくさんの人にとって中間貯蔵が最終処分のように思えてもおかしくない。


(2020年10月13日)
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関連資料:
ドイツ最終処分場選定中間報告書ダウンロード(ドイツ語)
ドイツ最終処分場選定中間報告書短縮版ダウンロード(ドイツ語)
ドイツ最終処分場選定中間報告書短縮版ダウンロード(英語)
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