2020年5月19日掲載 − 脱原発
原発冷却塔爆破の意味

2020年5月14日、ドイツ南西部にあるフィリップスブルク原発敷地内にある冷却塔2基が爆破された。


同原発では、1号機が福島第一原発事故直後に停止。2号機も、ドイツの脱原発政策で昨年2019年に停止されたばかりだった。同原発にある2基の原子炉が最終的に停止されたことから、冷却塔は不要となった。


フィリップスブルク市内のメイン通りでは、大きな冷却塔2基が目の前に立ちはだかって見えた。原発の立地する地元を象徴するような光景だった。その象徴が今回、破壊されたことになる。


しかし、冷却塔は原発特有のものではない。冷却水を川から取水する火力発電所や工業プラントにも大きな冷却塔が必要である。日本では、冷却塔があれば原発だと思っている人が多いので注意されたい。


これについては、本サイトでもすでに指摘した(「原発と冷却塔」)。


日本の原発では、冷却水を海水で冷やすので冷却塔はない。日本の原発は水冷式だということだ。それに対してヨーロッパでは、原発の冷却水を川から取水するので、暖かくなった水を川にそのまま戻すわけにはいかない。そのため、まず空気で冷やしてから川に戻す。空冷式だともいえる。


もし福島第一原発に冷却塔があれば、事故はそれほど大きくならなかったかもしれない。結果論だが、冷却塔で冷却水を冷やすことができたのではないかと思う。


原発の冷却塔なのだから、冷却塔が放射能で汚染されていると思う人も多いと思う。


しかし冷却塔は、原発敷地内の放射線管理区域外にある。つまり、放射能で汚染されている可能性のないとされる区域に設置されている。だから、原子炉停止5カ月後にして、爆破することができたともいえる。


原発の構造からして、冷却塔が汚染されている可能性は少ない。でも実際には、汚染されているかどうか測定して確認したいところ。今回実際に測定されたかどうかは、わかっていない。


たとえ万一汚染されていたとしても、放射性廃棄物を原子力法の管轄外として放射性廃棄物から除外するクリアランス基準(年間線量10マイクロシーベルト)内だろうと推測される。


冷却塔のあった敷地には、ドイツ北部において風力発電で発電された電力を直流から交流に変換するコンバーター設備が設置される予定という。ドイツでは、北部で風力発電が盛んなことから、風力発電で発電された電力を南部に高圧送電する需要が高まっている。


通常、高圧送電は交流で行われる。ただ送電距離が長距離になることから、ドイツでは再生可能エネルギーへの転換で、大量の電力を長距離で送電することに適する直流送電(HVDC)が普及する傾向が見られる。ドイツでは、高圧直流送電網を「電力の高速道路」とも呼んでいる。


今回の冷却塔の爆破は、ドイツのエネルギー転換を象徴する典型的な出来事だ。


(2020年5月19日)
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関連サイト:
冷却塔爆破の動画を見る(原発運転事業者のサイト。テキストはドイツ語)
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