2020年9月12日掲載 − 再生可能エネルギー
雇用維持か、構造改革か。ドイツ自動車業界の苦悩

新型コロナウイルスの影響で、ドイツでは自動車の販売台数が激減している。自動車産業は、ドイツで最も重要な産業。それだけに、新型コロナの影響で自動車産業をどう救済するのか。それは、重大な問題だ。


自動車業界はコロナ支援策の一環で、環境にやさしい最新のガソリン車とディーゼル車に対して新車購入補助を求めた。しかしコロナ支援策では、電気自動車に対してだけ購入補助を認め、ガソリン車とディーゼル車への購入補助は見送られた。


現在電気自動車に対する新車購入補助は、新車価格4万ユーロ(約500万円)以下の電気自動車で最高9000ユーロ(約110万円)。水素自動車もその対象となる。ハイブリッド車は、6750ユーロ(約85万円)となっている。新車価格4万ユーロ超の場合は、電気自動車/水素自動車7500ユーロ、ハイブリッド車5625ユーロである。


新車購入補助を電気自動車などに限定したのは、電気自動車など二酸化炭素を排出しない自動車への切り替えを促進するためだ。


ただドイツでは、2016年中から電気自動車に対して4000ユーロ(約50万円)、ハイブリッド車には3000ユーロ(約38万円)の新車購入補助が設けられていた。2016年から10年間、自動車税の支払いを免除するほか、バスレーンの使用を認めるなどの優遇措置も講じられてきた。


さらに、充電ステーションなど充電装置の整備にも3億ユーロ(380億円)を計上した。


ドイツ政府はそれによって、電気自動車の台数を2020年までに100万台にすることを目標にした。しかし、電気自動車の台数は増えない。そのため、目標台数を半減せざるを得なくなった。それも、実現できる見通しが立っていない。


電気自動車台数は2020年はじめの段階で、約14万台弱。2020年に入り、6月末までの半年の間に4万4000台の新車が登録されている。


現在の新車購入補助は、2020年7月に引き上げられた。それとともに今後さらに、電気自動車台数が伸びるものと期待される。


ドイツの自動車業界は長い間、ガソリン車とディーゼル車から電気自動車へ切り替えるのを躊躇してきた。そのつけがここにきて、明らかとなった。電気自動車を十分に生産するだけの体制も整っていない。


そこにきて新型コロナで、自動車業界は大きな影響を受ける。そのため、電気自動車への構造改革途中にある自動車業界をどう支援するのか。それが、たいへん難しい課題となっている。


ガロリン車とディーゼル車への新車購入補助を認めると、電気自動車への構造改革がより遅れる。ただそれを認めないと、自動車業界でたくさんの失業者の出る心配がある。


自動車業界の代表は2020年9月8日、ベルリンの首相府でメルケル首相と自動車産業立地州の州首相と今後の救済策について懇談した。その時には、ガソリン車とディーゼル車に対する新車購入補助は、まだテーマとならなかったという。


ドイツには、大手自動車メーカばかりでなく、中小の部品メーカがたくさんある。問題は、電気自動車への切り替えで、自動車1台あたりの部品数が半分以下になることだ。電気自動車への構造改革で、中小部品メーカが大きな打撃を受けるのも間違いない。


自動車業界は今、電気自動車への構造改革に向けて重大な局面を迎えている。自動車業界の代表と政府首脳は、今後も話し合いを続ける予定だ。


(2020年9月12日)
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