2020年9月26日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
ドイツ、再生可能エネルギー法を改正へ

ドイツ政府は(2020年)9月23日、再生可能エネルギーで発電された電気の固定価格買取制度(FIT)の基盤となる再生可能エネルギー法の改正案を閣議決定した。


ドイツ政府は、前回報告した欧州連合(EU)と同じように、2050年までに植物が吸収できる以上に二酸化炭素を排出しない気候ニュートラル化を目指している。そこでは、再エネの拡大が重要なポイントとなる。そのため今回の再エネ法改正によって、電力消費における再エネの割合を2030年までに65%に引き上げることを法的に規定する。


現在のドイツの電力消費における再エネの割合は、40%余りだ。


その目的を達成するため、陸上風力発電の発電容量を2030年までに現在の54GWから71GWに、太陽光発電の発電容量を52GWから100GWに拡大する。


ただここで問題となるのは、本来発電容量ではないはずだ。2030年までに電力需要がどのくらい増え、どの程度の電力消費が見込まれるかのほうが重要だ。


改正案は、2030年の電力消費を現在とほぼ同じレベルの580TWhと想定している。それが、再エネ法改正案による発電容量を見積る基盤になっている。


しかし電気自動車の普及拡大と重工業のグリーン化で、電力需要が今後大幅に増加することが予想される。


ドイツの環境シンクタンク「アゴラ・エネルギー転換」のグライヘェン所長は、2050年までに気候ニュートラルを実現すると、電力消費は現在よりも約60%多い900TWhになると想定している。電気自動車への切り替えだけでも、電力消費が現在より20%増加するという。


ケルン大学エネルギー経済研究所の試算でも、2030年の電力消費は748TWhになると予想している。


グライヘェン所長は、電力消費の増加を前提にすると、2030年までに再エネの割合目標65%を達成するには、ドイツ政府が想定するよりも毎年倍の再エネ発電施設を建設していかなければならないとする。


ドイツのアルトマイアー経済相は、重工業のグリーン化に積極的だ。だがそれに伴い、再エネの電力需要が大幅に増大することが想定されていないのだろうか。


もしそうだとすれば、今回の改正案は目標を達成できず、空振りに終わってしまう可能性も高い。早い段階でそれに気がつかないと、後で手遅れになることも心配される。


ドイツではこれまで、再エネ法をベースにした固定価格買取制度(FIT)は、何度となく改正されてきた。ポイントとなる改正は、以下の通りだ。


1991年:固定価格買取制度(FIT)を導入、風力発電が中心
2000年:再生可能エネルギー法成立
2004年:同法改正、太陽光発電を拡大
2009年:同法改正、太陽光発電管理強化、出力抑制保障(再生可能エネルギー熱法成立)
2012年:同法改正、太陽光発電大幅削減、同法適用外企業の拡大
2014年:同法改正、試験的入札制度の開始、再エネ電気の直接取引促進
2017年:同法改正、入札制度の開始、発電施設年間新設枠を2.8GWに制限
2018/19年、同法改正、発電施設年間新設枠を4GWに拡大

ドイツの再エネの発展は、これまで再エネ法の改正内容に大きく左右されてきた。それだけに、電力消費の拡大を軽視した今回の楽観的な改正内容は、今後の再エネの発展に汚点を残してしまいかねない。


なお改正再エネ法は、順調にいけば、2021年1月1日に施行する予定。


(2020年9月26日)
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関連リンク:
ドイツ経済エネルギー省プレスリリース(ドイツ語)
法案ダウンロード(ドイツ語)
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