ドイツでは、先月2020年2月、暴風をもたらす大きな低気圧が3回上陸した。各地で、屋根や飛んだり、木が倒れるなどの被害が出る。鉄道も、ドイツ全国で停止してしまう日もあった。
それに対し、風力発電量が記録的に伸びる。ドイツ電事連(BDEW)のプレスリリースによると、2020年2月の風力発電量は、全体で約219億kWhと予想される。そのうち180億kWhが陸上、残りの30億kWhが洋上風力発電によるもの。
それに伴い、これまでの月別風力発電量の記録165億kWhを約4分の1以上も上回った。2月が他の月よりも、日数が少ないにも関わらずだ。これまでの記録は、2019年3月に記録されたものだった。
2020年2月だけで見ると、風力発電だけで発電量全体の約45%をカバーしたと見られる。
その結果、どうなったのか。
電気の卸取引市場において、電気をマイナス価格で取引する時間帯が、大幅に増える。
2020年2月だけで84時間。お金を支払ってまで電気を引き取ってもらったのだ。これは、2020年2月全体の時間数の12%に相当する。
これまで電気がマイナス価格で取引された時間数は、2018年が134時間、2019年が211時間。それと比較すると、2020年2月がいかに記録的な状況だったかがわかる。
原子力発電と石炭火力発電では、常時ほぼ一定の電気が発電されている。それに対して、風力発電によって発電量が急激に増加する。暴風がきたことで、その間だけ発電量全体が急激に増加し、需要を上回ってしまった。
その結果、余剰電力をお金を払ってまでさばくしかなかったということだ。
これは、再生可能エネルギーによる発電と、従来の発電方法である原子力発電と火力発電が両立しないことを示している。さらに、再エネ発電では発電量の変動が大きいので、その変動を緩和するため、電気を貯蔵する技術が必要になっていることもわかる。
再エネの普及に伴い、電気の貯蔵技術によって、電気を電力供給だけではなく、熱供給、自動車の動力燃料として利用する重要性が増している。
その間のバランスをとって、再エネによって発電された電気を効率的につかわなければならない。それは、よくわかっている。
だが、それがまだ再エネによる発電量の増大に追いついていけないのが現状だ。
(2020年3月07日)
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