最終処分候補地を選定するための第一段階として、主に文献調査から得られた結果が、中間報告の形で発表された(「ドイツ、最終処分地候補を中間発表」)。中間報告書を作成したのは、国の連邦最終処分機構(BGE)だ。国の委託を受けて、最終処分候補地の選定と最終処分を実施する。国営企業だ。
BGEは、2016年7月に設立された。連邦議会の最終処分委員会の諮問に基づき、最終処分候補地の選定と最終処分を国の管轄下で行い、一本化することが決まったからだ。それまで放射性廃棄物の最終処分地の建設と運用を行なっていたドイツ最終処分会社(DBE)と、ドイツ放射線防護庁の最終処分部門などが統合された。
|
中間報告書で最終処分候補地に挙げられた地域。青と紫の地域が粘土層、緑と薄青の地域が岩塩層、肌色の地域が花崗岩層(出典:Bundesgesellschaft für Endlagerung(ドイツ最終処分機構)) |
|
上図は、その中間報告書においてまず文献調査などから最終処分候補地として挙げられた地域を示す。まだドイツ全体の50%以上が候補地となっている。
文献として利用された資料には、過去のボーリング調査の結果などもある。ドイツ全国でかなりの地域において、過去にボーリング調査が行われていたことがわかる。
最終処分候補地の選定に透明性をもたらすためには、選定において使用された資料も公開することが重要だ。ただボーリング調査の結果には、中間報告書を作成する連邦最終処分機構(BGE)が参照してもいいが、一般公開してはならないものが多くあった。
この点が、最終処分候補地の選定に関して市民との対話が行われた時に問題となった。市民側は、参照したすべての資料を公開すべきだと主張した。当然だと思う。でもBGEは、独自にボーリングしたわけではない。第三者によって行われたボーリング調査の結果については、BGEに情報公開する権利がない。
BGEは市民との対話において、「資料には版権があるものがある。その場合公開が難しいが、できるだけ資料の所有者を説得して資料を公開できるようにする」と説明していた。
後でわかったのだが、ボーリング調査は研究機関が地質調査を目的に行ったものではなく、民間企業が地下資源を探すために行ったものが多いことがわかった。ボーリング調査結果は、民間企業にとって宝のようなもの。企業秘密なのだ。
地下は、企業にとって地下資源のあるお金になるものなのだ。それでは、ボーリング調査の結果を公開することはできない。ボーリング調査の結果から、人工知能(AI)を使って地下資源を探すことも考えられているという。
ぼくは、地下の利権については考えていなかった。でも、それはそうだと思う。放射性廃棄物を処分することになる地下とは、とても価値のあるところなのだ。
そう思うと、最終処分候補地の選定はより難題だ。
(2021年2月02日) |