前回も書いたように、最終処分候補地が最終確定するまで、地元住民のアクセプタンスを得ることができるかが重要な課題となる。そのためには、最終処分候補地の選定プロセスがフェアで透明であることが求められる。
住民が選定プロセスがおかしいのではないかと疑問や不満を抱いた場合に備え、国家随行委員会(Nationales Begleitgremium=NBG)という組織が設けられた。NBGは、最終処分候補地の選定プロセスを監視する行政機関である放射性廃棄物処分安全庁(BASE)と地元住民(社会)を橋渡しする。最終処分候補地を決定する国と住民の仲介役ということだ。
最終処分候補地選定におけるオンブズマンのようなものだといってもいいと思う。
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現在の国家随行委員会(NBG)(出典:© Nationales Begleitgremium) |
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NBGは最終処分候補地選定に係るプロセスを監視し、プロセスに疑義が発生したり、地元住民から正当な理由で異議が出た場合、選定プロセスのやり直しを求めることができる。最終処分候補地の選定プロセスにやり直しする可能性を設けたことが、今回決まった新しい選定プロセスの核でもある。
選定された候補地に拒否権がないことに代わるものだといってもいい。
NBGは、選定プロセスを住民参加の形で実現するための中心になる組織だ。ただNBGが実際に、どういう役割を果たして進展していくのか、具体的にははっきりしないところもある。正直いうと、やってみるしかないといえると思う。
それは、住民参加で最終処分候補地を選定する試み自体がこれまでになかったことだからだ。「Lerning by doing」。それが、住民参加で最終処分候補地を選定する試み全体にいえる。その中でも、住民参加の核になるNBGに最も当てはまることだと思う。
NBGは、18人で構成される。そのうち一般市民は6人。一般市民はたとえば電話帳から無作為に選ばれ、本人にコンタクトして同意の下で選出される。市民委員のうち2人は、16歳から27歳の若者でなければならない。
残りの12人は、連邦議会(下院)と州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)によって選出、任命される。選出されるのは、学者や環境団体の代表、その他公衆で認められている人材で、幅広くいろいろな分野から選出される。現在、連邦議会の最終処分委員会に所属していた委員からも何人か選出されている。
委員の任期は3年。その後、最高2回まで再任が認められる。
NBGの定例会議は1カ月毎開催され、委員の申請があれば、臨時会議も開催できる。会議は、一般市民も傍聴できる。
NBGは、法的に設置された。でも、法的な執行権や拒否権を持っておらず、勧告権しか認められていない。これが、NBGの大きな弱点だ。この問題については、弁護士で長い間ゴアレーベンの反対運動を続けてきた市民グループのマルティン・ドーナートさんも「それでは弱い、意味がない」と批判的だ。
ただ、住民参加で最終処分候補地を選定する試みは、社会全体が一緒に学習しながら最終処分候補地を選定する「学習プロセス」といってもいいと思う。
(2021年1月12日) |