2021年5月25日掲載 − 脱原発
モジュール式の安全に対する疑問 - 小型原子炉は救世主か(3)

小型原子炉を開発する米国のニュースケールパワー社は、小型原子炉がモジュール化されているので、モジュール式小型原子炉を組み合わせると、原子炉を現在のように巨大化させることができるとしている。


モジュール式小型原子炉を並列に組み合わせ、大きな一つのバーチャル原子炉ができるのだと思う。確かにそうすると、モジュール化された小型原子炉毎に核燃料を交換すれば、大きなバーチャル原子炉を停止させずにいつも発電しながら、核燃料を交換する可能性が生まれる。


だからといって、大型のバーチャル原子炉を停止させないわけにはいかないと思う。原子炉は定期的に停止して、メンテナンスし、安全性を検査する必要があるからだ。その点は、モジュール化されても変更されてはならない。


となると、モジュール化小型原子炉を組み合わせて大きなバーチャル原子炉をつくることの魅力はそれほど大きくない。むしろ、弱点や欠点、経済性が問題とならないだろうか。


一番の問題は、モジュール化とバーチャル化に伴い、安全性をどう確保するのかだ。それが大きな問題になると思う。というのは、モジュール化とバーチャル化をベースにして原子炉の安全を確保するのは、まったく未知のことだからだ。


実際、小型原子炉を開発する米国のニュースケールパワー社も小型原子炉の安全性の問題については、今後の課題だとしている。


モジュール化された小型原子炉毎の単発の安全制御は、これまでの技術から応用できると思う。でもそれを並列に連結させた場合の安全制御は、これまでまったく考えられてこなかった。そのため、それをどう制御するかは、今後の重要な課題だ。


まず、並列連結して起こる可能性のある問題をあぶり出す必要がある。その後それぞれのケース毎に、どう安全性を確保するのかを考えなければならない。


それは、そう簡単なことではないと思う。


福島第一原発事故の教訓から、小型原子炉ではモジュール原子炉を並列に連結することで、外部電源が遮断されても、発電所内で自力で発電し続け、安全性と冷却水の供給が維持されると見ているようだ。


しかし、並列に連結された小型原子炉の一つが爆発するような重大事故が起こると、連鎖反応によってすべての小型原子炉が爆発するのは避けられない。それを避けるには、小型原子炉毎に頑丈な格納容器が必要になる。そうなると、莫大なコストが発生する。小型原子炉の経済性はますます悪くなる。


いずれにせよ、小型とはいえ、小型原子炉の安全はまだ保証されているわけではない。小型だからと甘く見ていてはならない。安全制御の開発には、なかりの時間がかかると思う。


小型原子炉の実用化については、安全性を考えると、まだ真剣に議論する段階にはなっていないのではないかと思う。


(2021年5月25日)
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関連サイト:
小型原子炉を開発するニュースケールパワー社のサイト(英語)
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