原子力発電の利点は、事故がない限り、常に一定の発電電力量を供給してくれることだ。原子力発電は停止しない限り、フル稼働を原則としている。そのため原子力発電は、最低必要な電力を供給するベースロード電源とされる。
これは、小型原子炉になっても変わらないと思う。
小型原子炉はモジュール型で、いくつも組み合わせて出力を大きくすることもできる。それなら電力需要に応じて、モジュール毎に原子炉を停止させたり、稼働させたり、停止して発電出力を調整することもできるはずだ。しかしそれは、運転コストを増大させるほか、原子炉毎の寿命を短くする可能性がある。さらに、安全性にも問題がある。
モジュール型といっても、小型原子炉は燃料棒の交換などどうしても必要にならない限り、いつもフル稼働させておくことになると思う。小型原子炉は従来の大型原子炉と同じように、ベースロード電源になると見られる。それがまた、小型原子炉の魅力になっているはずだ。
しかしこれから、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指すには、再生可能エネルギーは必要不可欠だ。ただ再エネは、天気などによって発電電力量が大きく変動する。それも、とても早いスピードで発電電力量が変化する。
それに対応するには、再エネによる発電電力量の変化に柔軟に適応できる発電方法が必要になる。それを専門的には、調整力という。ガス発電などがそれに当たる。ガスは簡単に燃やしたり、消したりすることができる。さらにガス供給量を調整することで、燃焼力も簡単に調整できるからだ。
再エネであれば、バイオガス発電がある。さらに再エネで発電された電気を蓄電池などに蓄電しておけば、発電電力量の変動に柔軟に対応できるようになる。
それに対して、ベースロード電源に依存する電力システムでは、再エネの発電電力量の変動に柔軟に対応できない。ベースロード電源では、常に一定の発電電力量を供給しているからだ。再エネによる発電電力量が急に増えて、電力需要をすべて満たすことができるようになっても、その時間帯にベースロード電源をすぐに停止させることはできない。再エネによる発電電力量が激減しても、すぐに発電電力量を増加させて電力需要を満たすこともできない。
常に一定の発電電力量を供給するベースロード電源の利点は、再エネが増加するとともに欠点となる。これは、原子力発電と再エネが両立しないことを意味する。発電における再エネの割合が多くなればなるほど、この兆候が顕著となる。それは、再エネを拡大し、段階的に原子炉を停止して脱原発を実現しているドイツにおいても、明らかとなった。
この問題は、小型原子炉になっても変わらない。常にフル稼働すると思われるからだ。その点で、これからより一層再エネを増やしていかなければならない時に、小型原子炉を開発して建設する意味はない。無駄な投資になるだけだといわなければならない。
地震国日本では、建物の耐震性を強化するのに、建物を揺れやすくして地震による揺れを吸収する構造とする。再エネが増えるにしたがい、それと同じことが電力システムにも当てはまる。常に一定に発電する柔軟性のないベースロード電源は、必要なくなる。
今後必要になるのは、発電電力量の変動に柔軟に対応できる調整力である。それには、小型原子炉は適さない。
(2021年6月15日) |