2021年7月06日掲載 − 脱原発
小型原子炉を分散型に応用する矛盾 - 小型原子炉は救世主か(9)

大型発電施設をベースにした従来の原子力発電では、なぜ発電コストが安いといわれるのか。


それには、主に3つの理由があると思う。一つは、核燃料となるウランの価格が安定し、火力発電の燃料となる石炭などより少量でたくさんの熱を発生させることができるからだ。もう一つの理由は、すでに大型発電施設向けに送電網が整備されているので、系統整備にもうそれほど投資する必要がない。


さらに、バックエンド(後処理)といわれる廃炉や放射性廃棄物処分に必要なコストと、原発事故によって発生するコストは、発電に関連するコストとして扱われない。


それに対して、再生可能エネルギーによる発電にはとても高いコストがかかるといわれる。それはなぜか。


再エネ発電施設は小型で、設備投資にそれほどたくさんの資金は必要ない。さらに、燃料もいらない。電気の卸売市場では、再エネ電気が最も安いではないか。


しかし再エネは新しく登場したエネルギー源なので、それを普及させるのに支援策が必要となる。再エネでは、小型施設を分散させてたくさんの発電施設を設置するので、既存の電力システムでは対応できない。再エネを系統に組み込むために、送電網などを整備しなければならない。特に、分散型発電に合わせた送電網整備に一番お金ががかかると見られる。


このコストを日本では、「統合費用」という。日本では、この統合費用が政府の地球環境産業技術研究機構(RITE)によってとても高く試算されている。新しいエネルギーの利用には本来、普及するとともに学習効果があり、それによってコストが大幅に削減されていく。日本ではその学習効果も、最小にしか試算されていない。


この統合費用が、日本で再エネが高いといわれる背景になっている。それにはいろいろ反論できるが、それは別の項に任せることにして、本項のテーマである小型原子炉の問題に入ろう。


ぼくが小型原子炉のことを聞いて一番びっくりさせられたのは、小型原子炉が分散型電力システムに応用できることがメリットになっていることだ。再エネの普及とともに電力システムも分散化されるので、それに柔軟に適応できるのは確かにメリットといえる。でもそうなると、再エネと同じように、統合費用が小型原子炉にも発生する。それでは、原子力発電が安いといわれてきたことと矛盾する。


ぼくはこれまで、小型原子炉は高いといってきたが、さらに統合費用まで発生するようでは、小型原子炉による原子力発電はさらに高いものになるはずだ。公平に競争すれば、再エネにはとうてい勝てないと思う。


再エネの統合費用をさんざん高いと批判してきたのだから、小型原子炉の統合費用も高いのは隠しようがない。オウンゴールといってもいい。


その小型原子炉には、どこに魅力があるのか。


ぼくには、どこにも魅力が感じられない。原子力発電という古い技術にカンフル剤を注射して、延命させているようにしか思えない。


(2021年7月06日)
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関連サイト:
地球環境産業技術研究機構(RITE)のサイト
小型原子炉を開発するニュースケールパワー社のサイト(英語)
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