2021年10月09日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
グリーンな飛行機燃料eケロシンを製造

ぼくはこれまで、内燃機関の時代が終わると書いてきた。すでに船や飛行機において、燃料電池を使ってゼロエミッション化するプロジェクトがはじまっている。


ただ必ずしも、内燃機関が終わったわけではない。たとえば船や飛行機では、燃料をグリーン化すれば、内燃機関をまだまだ使い続けることができる。


こうした燃料は、「e-fuel(e燃料)」といわれる。


e燃料は合成燃料で、再生可能エネルギーで発電された電気で製造した水素に二酸化炭素を混合してつくる。二酸化炭素の排出は実質ゼロになるので、カーボンニュートラルとなる。


バイオガスプラントにおいて、二酸化炭素を混合してバイオガスのメタン濃度を上げる装置を紹介したことがある。e燃料も含めてこれらの技術は、産業プロセスで発生する二酸化炭素を再利用する技術でもある。


元々の技術は、1世紀ほど前にドイツで開発されたFT法(フィッシャー・トロプシュ法)に由来する。一酸化炭素と水素から触媒反応によって液体炭化水素を合成した。


ドイツでは2021年10月4日、ドイツ北西部にあるバイオガスプラントの敷地内に世界最初のグリーンな飛行機燃料eケロシンを製造するためのパイロットプラントが稼働した。プラントでは、風力発電、太陽光発電で発電された電気で水素を製造し、それをバイオマスプラントから排出される二酸化炭素と空気中の二酸化炭素と混合して、eケロシンの原料となるe原燃料を製造する。


プラントの開発者は、アトモスフェア(Atmosfair)社。同社はこれまで、飛行機交通において二酸化炭素の排出実質ゼロを目指して、飛行機利用者が任意に二酸化炭素料金を支払うシステムを導入して、それを資金に再エネプロジェクトなどを促進してきた。


稼働したプラントでは、年間350トンのe原燃料が製造され、それをドイツ北部の石油精製工場でeケロシンに精製する。精製されたeケロシンは、ドイツ北部のハンブルク空港で飛行機に給油される予定だ。


そのために年間、1100トンの二酸化炭素と160トンの水素が必要だという。生産量はまだ少ないが、純粋なドイツ国内産のグリーンな飛行機燃料となる。生産量が少ないことから、当分は中長距離路線の飛行機にしか利用しないという。


アトモスフェア(Atmosfair)社はこれを技術標準にして、eケロシンの製造が各国で広がることを期待している。ただエネルギーをたくさん消費する割に燃料の生産量が少ないなどコスト高の要因がいろいろあり、まだまだ課題も多い。


ただ飛行機には、燃料電池を使うより、eケロシンのほうが実用性がある。今後の展開を注目したい。

(2021年10月09日)

記事一覧へ
関連記事:
ゼロエミッション飛行機の開発
ドイツはCCU(二酸化炭素の再利用)に期待
二酸化炭素をリサイクルする
関連リンク:
eケロシン製造プラントの写真(ドイツ語)
この記事をシェア、ブックマークする
このページのトップへ