2021年10月16日掲載
ドイツでは再エネ賦課金が2022年からほぼ半分になるが

ドイツでは2000年から、すべての再生可能エネルギーに対して、再エネ発電を促進するための固定価格買取制度(FIT制度)が適用されてきた。本格的にFIT制度が導入されてから、20年以上経ったことになる。


FIT制度では、電力市場で電気を調達する価格とFIT制度で決められた割高の再エネ電気の固定価格の差額を電気の最終消費者が負担する。その負担差額は、日本では再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)といわれる。


ドイツでは、電気1kWh当たりの電気料金の半分以上が、この再エネ賦課金を含めたその他の賦課金と税金で占められる。発電コストが基盤となる電気の調達コストと電気の送電にかかる託送料は合わせても、電気料金の半分にならない。


これまで、再エネ賦課金は賦課金と税金の全体の約半分近くを占めてきた。つまり、電気1kWh当たりの電気料金の4分の1弱が再エネ賦課金ということだ。


その電気1kWh当たりの再エネ賦課金は、2020年が6.76セント、今年2021年が6.50セントだった。再エネ賦課金を徴収する送電網事業者は今年10月に入り、その再エネ賦課金を2022年は3.72セントと、半額近くに下がると発表した。


再エネ賦課金はなぜ、下がるのだろうか。


それは、ドイツが2021年から二酸化炭素を排出するエネルギー源に対して二酸化炭素賦課金を課しており、その賦課金収入を再エネ賦課金を低減する資金源として利用することになったからだ。


こうして、二酸化炭素を排出する化石燃料の使用を抑えようという目論みだ。


ところが現在、コロナ禍が収束して景気が回復してきたことで、エネルギーの需要が増え、世界中で石油、ガスなどのエネルギー源が高騰している。たとえばドイツでは、灯油が前年比で76.5%高、ガソリンとディーゼルが28.4%高、天然ガスが5.7%高となっている。エネルギー全体では14.3%高となる。


天然ガスについては、ヨーロッパはロシア依存が高く、ロシアが政治的に供給量を絞っていることもあり、今後さらに高くなることが予想される。


それに伴い、食品や電気も上がり、ドイツのインフレ率は28年ぶりに4%を超えた。


気候変動の問題からいえば、二酸化炭素を排出するエネルギー源が割高になることで、その消費が減少することも期待される。しかし再エネ賦課金が下がるだけでは、現在のエネルギーの高騰分は相殺されない。そのため、低所得者層の生活に対する影響が心配され、社会問題となりかねない状況だ。


そのためEU委員会は、エネルギー源を共同購入することを提案している。スペインやフランスなどはすでに、エネルギーに課税する租税を免除ないし減税している。


ただドイツは、国政選挙の連邦議会選挙が終わったばかり。現在新政権の連立に向け、交渉が続けられている。そのためこの辺の対策は、次の新政権の手腕に委ねられる。


(2021年10月16日)
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関連リンク:
ドイツネット機構(規制庁)の再エネ賦課金ページ(ドイツ語)
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