ドイツでは再生可能エネルギーへのエネルギー転換において、市民協同組合の形で住民参加を促進している。これについては、本サイトでも何回か報告してきた。
それに対してオーストリアでは、今年2021年から「エネルギー共同体」の形で住民参加を進める。その基盤になっているのは、再生可能エネルギー拡大法(EAG)だ。
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エネルギー市民協同組合EnerGenoによって設置されたメガソーラー。ドイツ南部バイエルン州・グラッサウ(写真:EnerGeno提供) |
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オーストリアでは発電に占める再エネの割合は、75%と高い。しかしその多くが、水力発電による。そのため、太陽光発電と風力発電の割合はまだ低い。オーストリアは2030年までに再エネ100%を目指しており、それを実現するには、太陽光発電と風力発電を拡充する必要がある。
それを住民参加で進めようというのが、オーストリアの目論見だ。そのために、「再エネ共同体」と「市民共同体」という2つの「エネルギー共同体」を設けた。
エネルギー共同体は、いろいろなステークホルダーを集める母体となる組織団体。共同で、発電施設を設置して、発電された電力をシェアして消費する。共同で電力を貯蔵して、販売することもできる。ただエネルギー共同体の会員は、所属する共同体と電力供給契約を結ぶことを義務つけられない。会員は独自に、他の電力小売業者から電力を供給してもらうこともできる。
共同体を設立して、それに参加できるのは、市民のほか、自治体や警察署などの地方公共団体、電力関連事業を行わない中小企業などだ。
「再エネ共同体」では、対象となる電力が再エネで発電された電力に限定される。さらに、電力の地産地消を義務つける。再エネ共同体で発電され、消費される電力には、固定価格買取制度(FIT制度)による負担は加算されない。つまり、非FIT電力になるということだ。
「市民共同体」では、必ずしも再エネだけに限定されない。さらに地域性も制限されない。オーストリア全体で電力をやりくりするほか、会員も全国から参加できる。ただ再エネ電力は、FIT制度の枠内で発電されなければならない。そのため、FIT電力となる。
制度が開始された後に行われた世論調査によると、オーストリア市民の3分の2がどちらかのエネルギー共同体に参加することを考えているという。
(2021年9月04日)
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