2021年4月24日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
EU、2030年までの温室効果ガス削減目標を立法化へ

バイデン米国大統領が2021年4月22日、オンライン形式で気候変動首脳会議(サミット)を開催したのに先立ち、欧州連合(EU)と欧州議会はその前日、2030年までに温室効果ガス(二酸化炭素など)の排出を1990年比で最低55%引き下げることで合意した。それに伴い、EU委員会は2021年6月までに、その目標を具体的に達成するための立法化(Fit for 55法)を進める。


EU首脳会議は昨年2020年12月、2030年までの温室効果ガスの削減目標を最低55%とすることで合意。そのためにはさらに、欧州議会の合意を得る必要があった。


EUはそれまで、2030年までの中間排出削減目標を40%としていた。だが2050年までに、温室効果ガスの排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルを実現することを決定。そのためには、2030年までの排出削減目標をさらに引き上げる必要があった。


欧州議会はこれまで、気候変動対策の強化を求め、温室効果ガスを2030年までに65%削減することを求めてきた。


ここで問題になるのは、二酸化炭素の削減をどう換算するかだ。排出された二酸化炭素の一部は樹木などの植物によって吸収される(光合成)。たとえ削減率を55%と規定しても、光合成による吸収分を考慮すると、排出削減率は53%以下にしかならないという。


欧州議会は今回、光合成などによって吸収される二酸化炭素量に上限を設けるほか、植林によってその吸収量をさらに引き上げることで妥協した。


また、温室効果ガス削減状況をモニタリングするほか、10年後の2040年の削減目標を諮問する気候委員会を設置することも合意された。


EUは1990年から30年の間に、温室効果ガスを1990年比で約25%削減したにすぎない。2030年まではもう後10年もない。それを考えると、削減率をさらに30%引き上げるのは、並大抵のことでは達成できない。


それでも、欧州議会の緑の党や環境団体は、今回の合意ではパリ協定の目標を達成するには不十分だとしている。パリ協定は世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比較して1.5度未満に抑えるとしている。


(2021年4月24日)
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