2021年8月21日掲載 − HOME − 再エネ、エネルギー転換 − 記事
ドイツはこのままでは気候保護目標を達成できない

ドイツ政府は2021年5月12日、憲法裁判所が2019年12月に制定された気候保護法を違憲だと判断したのを受け、気候保護法を改正した。それによると、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を1990年比で2030年までに65%、2040年までに88%削減するとしている。


しかし、ドイツ環境省が気候報告書草案を公開したところによると、2030までの削減率は49%、2040年までの削減率は67%と予想され、ドイツ政府の目標を大幅に下回る。


報告書草案は、ドイツ環境省の下級官庁である環境庁の委託で、エコ研究所などの環境シンクタンクが共同で作成したもの。本来だと、今年2021年春に公開され、EUに提出されるべきものだった。


それが依然として確定版として公開されていないのは、不思議だ。今年2021年秋に国政総選挙である連邦議会選挙があることから、環境省が忖度して公開を控えたのか。


ドイツ環境省によると、報告書草案は2020年8月時点での政府の気候保護政策を基盤に作成された。前述したように、すでに気候保護法が改正され、目標が引き上がられた。それは、報告書草案ではまったく考慮されていないという。そのため環境省は、改善された現段階での政策を反映したものではないとしている。


ただ報告書草案では、2030年までに電気自動車が840万台となることを前提としている。ドイツでは、電気自動車の登録台数が何年もかかってようやく、100万台を超えたところだ。その台数が、10年で8倍となると予想されている。


風力発電でも、現在の発電容量54ギガワットが、2030年までに71ギガワットに増えると想定している。現在、風力発電施設の設置が難しくなっていることを考えると、かなり楽観的な数字だといえる。


こうして見ると、今後の状況を予想するのは、とても難しいことだともいわなければならない。


秋のドイツの総選挙後、新政権が気候保護対策をどう強化するのか。それが今、最も注目される。気候変動問題が、総選挙の大きな争点がであるのはいうまでもない。これまでのように悠長にしているわけにはいけないので、これからの30年間で経済と社会をどう気候にやさしく変えていくのか。その手腕が問われる。


それも、ドイツがものつくりの国として国際競争力を維持するほか、失業者が増えるなど社会的に痛みを伴うのをどう回避するのか。表向きは、各政党がその政策で争っている。しかしぼくの目からすると、どの政党にも具体策がないといってもいい。緑の党のように、あれこれは禁止、こうでなければいけないでは、社会はついていけない。

ドイツでは、夏の大洪水で200人近くが死亡している。それも、気候変動の影響だとされる。その莫大な損害を考えると、気候保護に投資して社会を変えたほうが全体として安く上がるはずなのだか。少し経つと、その被害のことは忘れさられる。

保守的に今のままで何とかなると思っていては、気候問題ではもう手遅れだ。でも社会では、大きな変化はゴメンというのが現実だと思う。それを社会にどう説得していくべきなのか。


気候変動対策では進んでいるドイツでさえそうなんだから、気候変動に対する意識に乏しい日本では、もっとたいへんなんだろうなあと思う。外から見ていると、日本はどうするつもりなのかとつい呆れてしまうのだが。。。


日本ではとにかく、一部を除くと、環境やエネルギーの問題に関心を持ってもらえない。


(2021年8月21日)
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