ドイツの環境シンクタンク「アゴラ・エネルギー転換」が試算したところによると、ドイツの昨年2021年の二酸化炭素など温室効果ガスの排出量は、2020年よりも4.5%増加した。それに伴い昨年は、二酸化炭素等の排出量は1990年比で38%削減したに止まった。
その結果、2020年までに1990年比で40%削減するとするドイツ政府の目標は、昨年2020年までに達成できたものの、再び目標を下回る結果となる。この傾向はまだ、数年続くという。
アゴラが新年(2022年1月)7日に発表した。
二酸化炭素等の排出量が増加したのは、2020年のコロナ禍から経済が立ち直った上に、ガス価格の高騰と再生可能エネルギーによる発電電力量の減少で、石炭火力発電による発電電力量が増えたからだと、アゴラは分析している。
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ドイツは、世界最大の褐炭産出国。ドイツ南東部ラウジッツ地方にある石炭露天掘り炭鉱では、石炭でも質の悪い褐炭が採掘されている。ドイツは2038年までに脱石炭することを決めたが、中道左派新政権は、それを2030年までに前倒しするのが理想としている |
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アゴラは昨年2021年はじめに、2020年の二酸化炭素等の削減目標が達成できたのは、コロナ禍による一時的なものだと分析していた。その分析は1年後に、現実となったことになる。
ドイツ政府はさらに、ドイツ憲法裁判所による違憲判断で、それまでの気候保護法の内容を強化しなければならなくなった。そのためドイツ政府は昨年、二酸化炭素の排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルを2045年に前倒しするほか、発電と建物、交通、産業、農業の分野毎に毎年の排出削減目標を細かく規定した。ドイツの気候保護規制は、これまでにない厳しいものになっている。
アゴラによると、気候保護法で規定された目標を達成できなかった分野は特に、2020年に続き建物だという。さらに交通も、コロナ禍で交通量が減少したが、目標を達成できなかった。
産業では、昨年も生産量がコロナ禍で減少したことから、削減目標にほぼ達したという。ただ今年2022年は景気が回復することが予想され、その分、産業での削減目標達成は厳しくなると、アゴラは見る。
発電における再エネの割合が減ったのは、昨年電力使用量が増えたのに対し、天候の影響で、特に昨年はじめの風量不足で、再エネによる発電量が減少し、電力使用量が増えた分をカバーできなかったからだ。
アゴラはさらに、過去数年間再エネ政策が滞り、再エネを十分に拡大することができなかったことも、ここにきて痛手になっているとする。
昨年末に誕生した社民党、緑の党、自民党による中道左派政権の連立協定によると、それを挽回するため、2030年までに再エネ電力の割合を現在から倍増させねばならない。
しかしその目標を達成するのは、かなり厳しいのも事実。今年2022年の対策がそのための重要な布石になると、アゴラは分析する。
(2022年1月09日)
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