2024年7月05日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
露天掘り炭鉱跡がメガソーラーに

ドイツ東部の都市ライプツィヒ(ザクセン州)南部に、大きなメガソーラー発電所が稼働している。「ヴィツニッツ・エネルギーパーク」という。


総発電出力は65万キロワット。これは、初期時代に設置された古い原発1基の出力に相当する。


敷地面積は500ヘクタールを超え、1100万枚以上のソーラーモジュールが設置されている。計画、設置した地元企業Move On Energy社によると、現時点ではヨーロッパ最大だという。


設置敷地は元、石炭より質の悪い褐炭の露天掘り炭鉱のあったところ。メガソーラーで発電された電力は、3500基のインバーターで直流から交流に返還され、独自にそのために設置された変電所2カ所で変圧され、380kVの高圧線に給電される。


発電、送電された電力は、電力販売契約(PPA=Power Purchase Agreement)というスキームによって発電事業者から電力の需要者に直接売電される。


電力は、従来の法的制度である再エネの固定価格買取制度(FIT)外で取引され、公的補助も受けない。


敷地にはさらに、160ヘクタールの土地が付属する。そこでは、エネルギーパーク周辺の環境と自然を保護するために植栽され、ハイキングやサイクリングに利用できる観光資源としても開発されている。メガソーラーによって『破壊』される自然を補填しているともいえる。


メガソーラーの写真、ビデオなどの資料は、以下の関連リンクにあるメガソーラーを計画、設置したベンダー「Move On Energy」社のサイトを見ていただきたい。



紹介したメガソーラーが設置された地域には、褐炭を露天掘りする炭鉱があちこちにある。ドイツは、世界最大の褐炭産出国だ。上の写真は、ライプツィヒ南東に位置するラウジッツ地方の露天掘り炭鉱の事例を示している。


この地域ではドイツ統一前にもすでに、廃鉱になった露天掘り炭鉱跡がいくつもあった。当時廃鉱跡地は、まだ十分に植樹されていなかった。どこを見ても灰色で、冬になるとガスがかかっていた。地球ではなく、まったく違う惑星にでもいるような気がした。


これら炭鉱跡ではすでに木が大きくなるほか、炭鉱跡地を人工湖に開発して、観光資源として再利用されているところが多い。


ドイツは今のところ、早くても2030年まで、遅くとも2038年までに脱石炭化して、炭鉱を含め、すべての石炭型火力発電所を停止させる。


そのため、石炭産業が盛んな地域の構造改革が急務の課題となっている。


露天掘り炭鉱跡地は汚染されているだけに、汚染された土地でも設置できるメガソーラーは石炭産業地域を構造改革するには、効率のいい、適切な選択肢の一つともいえる。


前掲の写真は、同じくライプツィヒ近郊にある別のメガソーラーの写真だ。


敷地は、旧ソ連赤軍の基地があったろころ。軍事基地跡では土地が汚染されていることから、その後の再利用が難しい。


それに対してメガソーラーは、汚染された土地の土壌を入れ換える必要がないという利点がある。ドイツでは、こうした再利用の難しい汚染された土地がメガソーラーの設置場所として使われる。


メガソーラーのために森林を伐採したりすると、違う場所でそれと同じ面積に相当する森林を植樹して、相殺しなければならない。


2011年6月に撮影した。ドローンがあれば簡単だが、当時はまだドローンのない時代。大きなメガソーラーを撮影するのは至難の業だった。


その時は、気球をチャーターして上から撮影した。気球は地上と空中の温度差が小さい時にしか安定して飛ばないことから、日の出直後か夕方遅くしか気球を飛ばすことはできないといわれた。


そのため早朝まだ暗いうちに、現地まで行ったのを覚えている。


(2024年7月05日)
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関連リンク:
プロジェクト開発会社Move on Energyのメガソーラー紹介サイト(ドイツ語、ビデオもあり)
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