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ドイツ最終処分機構(BGE)は2025年11月03日、高レベル放射性廃棄物の最終処分候補地の選定プロセスの進捗情報を中間発表した。
BGEは2020年、全国を文献調査によって最終処分候補地となりうる地域を全国の54%に絞り込み、最終処分地選定の審査の前提となる地域を中間発表していた(以下の地図参照)。
現在、その候補地域が90の地域に分けて審査されている。この第1段階の審査は全体で4段階で行われ、現在第1段階(不適切)と第2段階(あまり適さない)の審査が行われ、第1段階と第2段階の審査を通過しなかったものと、最初の2つの審査を通過したもの(適する)に分類されている。
昨年2024年に90地域のうち13の地域の審査結果が発表され、今年2025年は29の地域の審査結果が発表された。
その結果、2000年に発表された候補地の53%が候補地として除外され、残りの47%に関してはまだ審査中だ。第1段階と第2段階の審査は、来年2026年中頃に終了し、それで残った地域に対して第3段階(安全性の質)と第4段階(安全性の論証)の審査を行い、2027年末までに地上からセンサーやボーリングで地層調査を行う地域が公式に発表される。これで候補地は、10くらいの地域に絞られる見込みだ。
地上調査の後、地下調査を行う地域として2箇所か3箇所が提案され、地下調査の後、最終処分の最終候補地が提案され、最終的に国会決議で最終処分地が確定する。
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中間報告書で最終処分候補地に挙げられた地域。青と紫の地域が粘土層、緑と薄青の地域が岩塩層、肌色の地域が花崗岩層(出典:Bundesgesellschaft für Endlagerung(ドイツ最終処分機構)) |
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最終処分地選定法は、2031年に最終処分候補地を国会決議するよう規定している。しかしそれはもう不可能であることがわかっており、BGEはたとえ地上調査をする地域を2027年に提案しても、その後の地上調査と地下調査が終了するのは、2060年代に入り込むとしている。
BGEによる選定プロセスを監督する放射性廃棄物処分安全庁(BASE)は、最終候補地の提案は2049年頃までに実現するよう求めているが、それが可能かどうかはまだはっきりしない。
選定作業に時間がかかるのはドイツの場合、最終処分地選定法でその候補地として岩塩層、粘土層、結晶質岩層(花崗岩など)の3つを岩層を調査しなければならないからだといわれる。
さらにドイツの選定プロセスは、応募してきた自治体の地域だけを審査して最終処分候補地を選定する日本と違い、ドイツ全土を審査して適切な地域を絞り込み、その中で最適な場所を最終処分候補地とする。この点は、日本の選定プロセスと大きく異なる。
これまでの審査では、結晶質岩層地域がほとんど適さないと判断されているので、結晶質岩層をこの段階で除外すべきだとの意見もあるが(連邦環境省の最終処分委員会など)、BGEは法的に規定されている3つの岩層で調査を続ける方針だ。
今回発表された結果を見ると、第2段階までの審査が終わっているのは主に、ドイツ中部から南部の地域で、北部の地域ではほとんど審査が終わっていない。
第2段階までの審査を通過した地域は、ドイツ西部ノルトライン・ヴェストファーレン州北部、ニーダーザクセン州南部、ドイツ東部のテューリンゲン州、ザクセン州、それに南部のバイエルン州とバーデン・ヴュルテムベルク州に見られる。しかし南部の地域に残っている地域はごく少数だ。
ドイツ最終処分機構(BGE)は国の委託を受けて、最終処分地の候補地域の調査と選定、最終処分場の建設、運用を行う機関。国は放射線防護庁を分割して、BGEの監督機関として放射性廃棄物処分安全庁(BASE)を設置した。BASEは、最終処分場の選定プロセスにおける住民参加も推進する。
なお、2020年の中間発表後の進捗情報の公開は、拘束力のあるものではない。暫定結果でしかなく、今後の審査で変更される可能性がある。そのため今回は、2020年に中間発表された拘束力のある地図だけをこの記事に挙げた。
今回発表された結果は、以下のBGEの最終処分ナビゲーター・プレスリリースのリンクをクリックすれば、地図が見れるようになっている。
地図では、濃い茶色の地域が第1段階(不適切)で、薄い茶色の地域が第2段階(あまり適さない)で、先に進めなかった地域。水色の地域がこの2つの段階の審査を通過し、第3段階、第4段階の審査に回される地域だ。灰色の地域はまだ最初の2段階の審査が行われている地域である。
(2025年11月05日) |