2017年4月05日掲載 − HOME − エネルギー選択宣言一覧 − 8章記事
3)生物資源の動力燃料化

その他、エタノール車とバイオディーゼル車があります。生物由来の再生可能なバイオマス(生物資源)を原料として製造されるバイオ燃料を燃焼させて走ります。エタノール車とバイオディーゼル車は、ドイツでも1990年代にたいへん注目されていました。しかし、燃料を製造するのにトウモロコシやサトウキビ、アブラナなどを原料とするため、食糧生産と競合するという問題が指摘されました。そのため現在、バイオディーゼルの生産はほとんど使い古した食用油からしか行なわれていません。


エタノール(ガソリンの代用)もバイオディーゼル(ディーゼルの代用)もドイツでは現在、ガソリンないしディーゼルと混合してしか使えません。それに対してスウェーデンでは、自動車燃料のエタノール化を積極的に進めています。 たとえ食糧生産と競合しないように調整しても、燃料の原料生産に莫大な土地を必要とします。その結果、農地の植生が単一化してしまい、一つの害虫で大きな被害を受ける危険もあります。


この問題を解消するため、海に面しているところの少ないドイツでは、陸地で太陽の光エネルギーによって海藻を養殖するバイオリアクターの開発も進んでいます。バイオリアクターには、建物の外壁に取り付けるプロトタイプも出てきました。生育した海藻からエタノールなどのバイオ燃料を造ります。海藻はさらに、食品の原材料としても利用できます。


ただ生物資源による燃料生産には、肥料の生産や原料生産地から燃料製造地と燃料消費地までの輸送にたくさんのエネルギーを消費するという問題があります。エタノールやバイオディーゼルが、自動車に使用されているゴムやプラスチックなどの部品を腐食させやすいとも指摘されます。


生ゴミなど家庭から排出される廃棄物を原料にしてバイオ燃料を製造することも、技術的に可能となっています。ただ生ゴミは、バイオガス発電の原材料として使うこともできます。問題は、どの方法で使うのが採算性があるかです。すでに述べたように、生ゴミを堆積しておけばメタンガスを回収できます。それをガス配管網に供給したり、燃料電池の燃料として使うことができます。バイオガスを二酸化炭素と結合させてメタン濃度を上げれば、それを自動車の燃料として使うこともできます。


これらの可能性は、生産と利用する場所の条件によって長所と短所があります。これは、どうしてもこの用途に使わなければならないということではありません。飛行機の燃料をどうするかも、考える必要があります。すでに生物資源から製造した飛行機の燃料が試験的に使用されています。


適材適所で、柔軟に適切な利用方法を選択することになります。


(2017年4月05日掲載)

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