2014年5月1日掲載 − HOME − 放射線防護 − 記事
ドイツで低線量被曝によって先天異常が増加

日本では、年間線量が1ミリシーベルト以下の低線量では健康に影響がないといわれている。しかしチェルノブイリ原発事故後、ドイツで最も放射能に汚染されたドイツ南部のバイエルン州の健康被害状況を見ると、低線量でも健康被害が起こることがわかる。


2014年3月に発行されたドイツの放射線防護専門誌「放射線テレックス」で、ドイツの国立研究所に相当するミュンヒェン・ヘルムホルツセンターのハーゲン・シェアブらの研究チームが、バイエルン州においてチェルノブイリ原発事故後に低線量被曝によって先天異常が増加したと報告している。研究チームは、ドイツ放射線防護庁が1984年から1991年の間にバイエルン州において984,570の出生児中、155の疾患数において全体で29,961件の先天異常を把握した統計データを解析した。


それによると、バイエルン州を96の地域に分割して、年間線量を0.11ミリシーベルト、0.16ミリシーベルト、0.23ミリシーベルト、0.39ミリシーベルト、0.65ミリシーベルトの5つのカテゴリーに分けて比較した。その結果、その線量に比例してチェルノブイリ原発事故6ヶ月後の1986年10月から先天異常の頻度が統計上有意な上昇を示していることがわかるという。先天異常は年間1ミリシーベルト当たり51%上昇した。


先天異常の頻度を性別に見ると、放射線被曝を原因とする先天異常のリスクは女児においてのほうが、男児においてよりも俄然大きくなる。女児の場合、先天異常は年間1ミリシーベルト当たり82%上昇したが、それに対して男児の場合、先天異常は年間1ミリシーベルト当たり32%しか増加していない。


女児と男児の間には、放射線曝露に応じて先天異常に対する感受性に有意な違いがあるという。この性別による(先天異常リクスが異なるという)結果は、放射線曝露に応じて女児が減少する徴候も裏付ける。男女の出生性比では、線量に応じて性比が変化して女児が減少する徴候が確認されている。


ミュンヒェン・ヘルムホルツセンターの研究チームによると、受精卵、胚、胎児、新生児の発生と発育は、女児においてのほうが男児よりも放射線に対して敏感なようだという。これは一つに、女児にいく父方のX性染色体のほうが放射線によって損傷を受けやすいからではないだろうかと推測される。


(2014年5月1日、おすと   えいゆ)
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