2019年3月11日掲載 − ブラボー!
ヴィニツカヤのラフマニノフ《ピアノ協奏曲第3番》

現在最も技巧の優れたヴィルトゥオーソな若手ピアニストの一人、アンナ・ヴィニツカヤ。そのヴィニツカヤが1月14日、ベルリン・フィルハーモニーでベルリン放送響(RSB)とラフマニノフの《ピアノ協奏曲第3番》を演奏した。指揮は、ユッカペッカ・サラステ。


このピアノ協奏曲は、楽譜一面が真っ黒に音符だらけになっているのではないかと思われるくらいピアニスト殺しのたいへんな難曲だ。かといって音楽は攻撃的ではなく、流れるような音楽が多様に変化しながら展開していく。とても叙情的で、繊細な作品ではないかと思う。それだけにピアニストには、卓越した技巧ばかりでなく、高い音楽性も求められる。


ヴィニツカヤは、最初に流れるメインテーマを淡々と弾きはじめた。テーマがその後いろんな形に変奏されていくが、そこからがヴィニツカヤの聴かせどころだ。ピアニスト泣かせのとても細かい音符が、濁らずにとても鮮明に響き渡っていく。


カデンツァでは、オーケストラ楽団員が後ろからからだをよじってヴィニツカヤの手を見やっている。「わーすごい!」とでもいわんばかりの顔が並ぶ。


ヴィニツカヤが鍵盤を叩くと、真っ黒な楽譜からロシアの広大な大地が飛び出してくるようだ。ラフマニノフはこの作品を、夏のロシアの大地を目の前にして書いたという。そこには、広々としたライ麦畑が広がっていたに違いない。


ロシア音楽の神髄を聴かせてもらったと思う。


(雑誌「音楽の友」2018年2月号掲載)
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