ベルリン国立オペラの芸術監督ダニエル・バレンボイムが今日2023年1月06日、2023年1月31日で辞任すると声明した。昨年2022年2月に脊髄を手術した後、不治の神経系の重い難病を患っているといわれる。まだほとんど復帰できない状態が続いていた。
そのためバレンボイムは、昨年秋に80歳になることを機に計画されていたヴァグナーの指輪の新演出公演もすべてキャンセルしていた。
ベルリン国立オペラのサイトではまだ、この3月からのプログラムにバレンボイムの名前が載っている。それもこれから、代役を発表するという。
バレンボイムはベルリン国立オペラにきて、30年を超える。東西ドイツ統一後に、ベルリン国立オペラを再建して世界有数のオペラハウスに育てた大の貢献者だ。その契約が昨年、2027年に更新されtばかり。オペラのオーケストラであるシュターツカペレのほうは、終身首席指揮者となっている。
今後、バレンボイムの後任を探さなければならない。
後任の一番候補に挙がっているのは、クリスティアン・ティーレマンだといわれる。ティーレマンは、バレンボイムがキャンセルしたヴァグナーの指輪の一部の他、昨年12月のベルリン・シュターツカペレによる日本公演も含めたアジアツアーでも代役を務めた。
ティーレマンが昨年7月のシュターツカペレのコンサートで、怪我をしたブロムシュテットの代役として急遽、指揮をした。それについては本サイトでも書いたが、それが昨年秋以降の重要な公演をティーレマンに任せるためのテストであり、予行演習だったと見られる。
実際そのコンサートでは、バレンボイムが会場にきて、コンサートを聞いていた。
その時のコンサートは、それほどいいとは思わなかった。ただ楽団員の中では、ティーレマンに好意的な声が多いともいわれる。その点で、ティーレマンがバレンボイム後任の最有力候補であるのは間違いない。
ただぼくは、ティーレマンはバレンボイムの後任として不適切だと思っている。
これまでの実績からすると、ティーレマンはオーケストラを育てることができない。自分より優秀な指揮者を登用したがらず、潰していくのも問題。得意な音楽がドイツ音楽などに集中しすぎ、オペラハウスの芸術監督としてプログラムを組んでいく能力に疑問が残る。こうした点は、芸術監督には適さない。
ドレスデン・シュターツカペレが首席のティーレマンとの契約を更新しないのがよくわかる。
ぼくはいずれ、ベルリン・フィルの首席指揮者・芸術監督であるキリル・ペトレンコがベルリン国立オペラの芸術監督になるべきだと思っている。しかしそれまでには、まだまだ時間がかかる。近いうちに、ペトレンコがベルリン・フィルを離れることは考えられないからだ。
ペトレンコにはまずは年1回くらいのペースで、ベルリン国立オペラにおいてオペラの新演出の指揮をしてほしい。
ペトレンコはオペラ指揮者だ。しかし彼にとって、コンサートオーケストラの首席を務めるのは、将来より偉大なオペラ指揮者になるためにはとても勉強になると思う。ベルリン・フィルは、そのためのステップにすべきだ。
となると、ペトレンコが就任できるまで、継なぎ役が必要になる。
ティーレマンでは、継なぎ役は無理だと思う。かといって、その他の指揮者に適任者がいるかとなると、それも難しい。
ぼくが最近ベルリン国立オペラで聞いた指揮者の中では、アントネッロ・マナコルダをダークホースとして挙げたい。いやダークホースではなく、ぼくはマナコルダをバレンボイムの後任に推す。
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ベルリン国立オペラのマナコルダ指揮のイェヌ・ファの公演後のカーテンコールから |
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ぼくが聞いたのは、ヤナーチェクの⟪イェヌーファ⟫。イェヌーファをはじめて聞いたかのように、音楽に新鮮さがあった。メロディーの表情が豊かで、とても音楽性に優れている。
マナコルダは元々、バイオリニスト。現在、ベルリンに隣接するポツダムの室内管弦楽団カンマーアカデミーの首席指揮者・芸術監督を務める。指揮をはじめたのが遅く、その点ではまだ知名度が低い。
ただすでに、ベルリンばかりでなく、ヴィーンやミュンヒェン、ニューヨーク、ロンドンなど世界トップのオペラハウスで指揮をしている。ベルリン・フィルでも、昨年2022年5月にデビューしたばかり。マナコルダへの注目度は今後、うなぎのぼりになるのは間違いない。
マナコルダは今後も、ベルリン国立オペラで指揮をする機会が増えていくと思う。両者の関係がどう発展していくのか、楽しみだ。
バレンボイム後に関しては、ベルリン国立オペラのマネージメント側と契約するベルリン市に、ティーレマン以外を後任とすることにどれくらいの勇気があるかも、とても重要なポイントになる。
ペトレンコがベルリン・フィルの監督になった時のように、ぼくの願いが叶うかどうか見守りたい。
(2023年1月06日、まさお) |