拙書『「小さな平和」を求めて ポツダム・トルーマンハウスとヒロシマ・ナガサキ広場の記録』が出ました。この本でも、持続可能な森林管理によって製紙された紙であることを認証するFSCマークつきの紙を使っています。
原爆投下と終戦80年をテーマとした拙書です。しかしなぜ、ここでもFSCマーク紙を使うのでしょうか。
以下で、拙書の巻末に入れた「紙の本出版に寄せて」に書いた文章を引用します。
 |
|
本では、カバーの裏表紙(写真)と本体奥付けにFSCマークと登録番号が入る。写真では、左側にある緑色の部分 |
|
インターネットの普及で、紙の本が売れなくなっているのは事実。かといって、紙の本でなければ届かない読者層もある。紙の本には不利な時代に、割高で手間のかかるFSCマーク紙を敬遠するのは、わからないこともない。しかしぼくは、オピニオンリーダーとしての本の役割を放棄したくない。脱炭素化へと転換しなければならない時代にFSCマーク紙を使わなかったら、ぼくには本によって気候変動問題と脱炭素化について議論することはできない。平和について述べることもできない。
ドイツの本では当然のように、FSCマーク紙やカーボンニュートラル仕様の紙が使われている。ぼくがそのドイツで生活しているから、FSCマーク紙を使いたいと思うだけなのだろうか。いや、そうではない。意識の問題だと思う。
将来、地球の温暖化がさらに深刻になると、気候難民が発生するのは間違いない。北半球の北では、凍土が解けて住めなくなる。南では、暑すぎてもう住めない。農業もできなくなる。その時難民数は、今の戦争難民の比ではない。難民がどれだけの規模になるかは、想像もできない。食糧難でたいへんなことにもなる。生活空間と食糧を求め、熾烈な争奪戦がはじまる。戦争がもっともっと起こりやすくなる。平和は、気候変動の問題に密接に依存している。
ドイツのEU(欧州連合)外交の専門家に聞いたところ、ヨーロッパではすでに、この問題が認識されている。しかしわかっていても、手をつけられない。ヨーロッパでは他に問題が多すぎて、そこまで手が回らないという。将来、気候難民が南北から中央ヨーロッパに大移動してくる時には、まったく無防備だ。政治は見ないようにしているといってもいい。これは、ヨーロッパだけの問題ではない。世界全体の問題だ。
この状況で今、ぼく個人に生活する中でできることはないだろうか。
それが、FSCマーク紙を使って森林を守ることだ。森林は、温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収してくれる。もちろん、ぼくのできることはごく微々たるもの。でもぼくにとり、FSCマーク紙で本を出すのは「小さな平和」を求める小さなプロセスともいえる。だから平和について書いたこの本でも、FSCマーク紙にこだわった。
(引用終わり)
日本においてもドイツと同じように、FSCマーク紙など気候変動問題を考えた紙を本に使うようになってほしいと思います。 |