石炭火力発電と原子力発電は、フル稼働を原則としています。
原子力発電では、全く不可能とはいいませんが、発電量を調整できません。燃料棒の間に制御棒を入れて緊急停止させるか、フル稼働するかのどちらかだけです。
石炭火力発電では、燃えている石炭はすぐには消えません。そのため、発電量を調整するのに時間がかかります。
そのため石炭火力発電と原子力発電では、いつも同じ量の電気が発電されています。その安定性から、石炭火力発電と原子力発電は、最低限必要な電気を供給するベースロード電源となっています。
ただ常に同じ量を発電する発電方法は、再生可能エネルギーで発電される電気量が増えるに伴い、電力供給システムにおいて問題となります。
それは、再生可能エネルギーよる発電量が天候などによって大きく変動するからです。その量が増えるにしたがい、時間帯によっては再生可能エネルギーだけで電力需要を満たすことが出きるようになります。
その時、石炭火力発電と原子力発電で発電された電気は必要ありません。でも再生可能エネルギーによる発電量とは関係なく、石炭火力発電と原子力発電ではフル稼働で発電されています。その結果、電気の供給と需要のバランスが崩れ、送電網が不安定になります。
日本では、太陽光発電の出力抑制がはじまっています。それは、太陽光発電の発電量が多すぎて、送電網が不安定になるからです。
これは、何を意味するのでしょうか。
ベースロード電源となる原子力発電と石炭火力発電は、再生可能エネルギーと両立できないということです。
変動の大きい再生可能エネルギーが増えると、発電量が一定の発電方法ではその変動に対応できません。変動には、柔軟性のある方法で対応するしかありません。
これは、耐震性高層ビルが地震の揺れを吸収できるように揺れる構造となっているのと同じだと思います。
温暖化対策として、原子力発電を増やすには、原子炉を新設しなければなりません。でも原子炉の建設には、最初の設計段階から完成するまで20年近くかかります。
原発メーカはよく、建設期間は10年くらいだといいます。でもこれまでの経験からすると、その短い期間では不可能です。
その間、温暖化は待ってくれません。今から原発を新設しても、温暖化対策としては手遅れになります。
となると、既存の原発をできるだけ長く稼働させたほうがいいという意見ができてきます。でも、それで温暖化対策になりますか。
温暖化対策を講じるには、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出する発電方法を止め、温室効果ガスを排出しない発電方法を増やさなければなりません。となると現在は、水力か再生可能エネルギーを増やすしか可能性がありません。
水力発電では、ダムを建設して大規模水力発電を行うと、環境を破壊します。となると、残りの選択肢は再生可能エネルギーしかありません(ここでは、小型の水力発電を再生可能エネルギーの一部と考えています)。
再生可能エネルギーを増やすには、これまで述べたように、柔軟性のある電力供給システムを構築しなければなりません。それには、柔軟性のない原子力発電と石炭火力発電が大きな障害になります。
再生可能エネルギーの発電量だけで電気需要が満たされる時間帯では、原子力発電と石炭火力発電が常に同じ量の電気を発電しているので、たくさんの電気が余ってしまいます。それに対応するには、再生可能エネルギー発電施設の出力を抑制するか、余った電気をマイナス価格で売るしかありません。お金を払ってまで、電気を引き取ってもらうということです。
それでは、無駄が多すぎ、発電コストが割高となるだけです。
温暖化対策を講じるには、建設コストが安く、建設期間も短い再生可能エネルギーの発電施設を設置して、それとともに原子力発電と石炭火力発電を止めていくしかありません。
温暖化に対応するには、脱石炭ばかりではなく、脱原発も必要だということです。
(2019年6月12日)
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