再生可能エネルギーを普及させるには、電気の固定価格買取制度(FIT制度)が必要だといわれます。
それでは、なぜFIT制度が必要なのでしょうか。
FIT制度は、再生可能エネルギーで発電された電気を買い取る場合の価格を固定するものです。ドイツの場合その価格は、発電施設で発電が開始された後、20年間固定されます。
固定価格を設定するのは、電気の価格を電力市場で取引される流通価格よりも割高にするためです。そうしない限り、市場において新しい方法で発電された電気を従来の火力発電や原子力発電によって発電された電気と公平に取り扱うことができません。
こういうと、やはり再エネは高いのだ、といわれると思います。
でもそれは、違います。従来の発電方法には、これまでいろいろお金が投資されてきています。それで定着したから、安いのです。その経緯を無視して、新しいものと古いものを比較してはなりません。
でもそれなら、新しいものを取り入れなければいいではないかといわれるかもしれません。
でも、原子力発電と火力発電をこのまま続けていっていいのですか。
これら2つの発電方法に必要な燃料は、有限です。原子力発電には放射能の問題、火力発電には二酸化炭素の問題があります。
それでもいいのですか。
エネルギーを持続的に供給するためには、原子力発電と火力発電の抱える問題に対処しなければなりません。問題を解決して乗り越えるためには、新しいことが必要になります。
従来の古いものを新しいものに転換するには、時間がかかります。この問題を乗り越えるためには、新しいものに投資するインセンティブと投資の安定性をもたらすことが大切です。
FIT制度は、そのためのものです。
もちろん、FIT制度も開始当初からずーと長い間そのままでいいわけではありません。再エネの普及状況に合わせて、制度も変えていかなければなりません。
固定価格がやけに高いだけでもいけません。再エネのための新しい産業は急速に成長します。でも、すぐにバブルがはじけます。それでは、持続性がありません。
新しいものは、ゆっくり育てていく。
そうすれば、FIT制度がなくても、再エネはいずれ独り立ちできるようになります。
FIT制度は、再エネのためのインキュベーション制度なのです。それによって、将来に投資しています。
(2019年9月11日)
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