前回、二酸化炭素の排出実質ゼロとなる脱炭素社会を実現するには、電力中心の社会にならざるを得ないと書きました。ぼくたちはすでに、電気製品に電力を使っています。でもそればかりではなく、ぼくたちの生活では交通や暖房にまで、すべて電力を使わなければなりません。
重工業を含めすべての産業においても、石油や石炭、ガスを使わないでグリーン化しなければなりません。そこで重要になるのは、水素です。たとえば、製鉄や化学産業に水素が必要になります。その水素も、再生可能エネルギーで発電された電力で製造して、グリーン水素を使います。
となるとぼくたちは一体、脱炭素化するのに、どれくらいの電力を必要とするのでしょうか。
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洋上風力発電施設の基礎部分(右)とタワー(左) |
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洋上風力発電施設の基礎とタワーをつなぐ部分 |
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ドイツの環境シンクタンクは、脱炭素化によって電力の需要がこれまでの1.6倍になると推定しています。それは、すでに前回書きました。
これは将来、ドイツ全体で年間900TW/hの電力を必要とすることを意味します。ドイツは現在、ようやく電力需要の半分近くを再エネで供給しているにすぎません。ということは、再エネによる年間の発電電力量はまだ、300TW/hにも達していません。
脱炭素社会で必要な電力をすべて再エネで発電するには、再エネの発電電力量をさらに600TW/h以上増やさなければなりません。こんなにたくさんの電力を、再生可能エネルギーだけで発電することができるのでしょうか。
ドイツの環境シンクタンクは、するしかないし、可能だとします。ただ万一、国内での再エネによる発電電力量がすべての需要を満たさない時は、北アフリカにおいて再エネで発電された電力で水素を製造すべきだとします。
ドイツはそれに備え、モロッコなど北アフリカ諸国とそのための契約を締結しています。
ドイツ国内では、主に洋上風力発電された電力によって水素を製造することになります。夜間電力需要の少ない時、洋上風力発電された電力が余るので、その余剰電力を使って水素を製造する計画です。それを実現するには、ドイツは洋上風力発電容量を大幅に増やさなければなりません。
ただそれだけでは、実際にすべての電力需要を満たせるのかどうか、不安があります。将来、電力の安定供給を保証できない可能性だってあります。
それでは困ります。そういう事態にならないようにするには、どうするべきなのでしょうか。
将来の脱炭素社会に必要となる総電力量を、できるだけ早く推計することだと思います。いくつかのシナリオを考え、そのシナリオ毎に必要な電力量を推計します。それがわかれば、必要となる再エネ発電施設の総発電容量も換算できます。
そこから逆算して、毎年の再エネ拡大目標を立案します。その目標が達成されたかどうかも、毎年モニタリング調査を行います。
ドイツは、2045年までにカーボンニュートラルを達成して脱炭素社会になると宣言しました。それまでにはもう、20年余りしかありません。残された時間は、もうわずかです。
これから行うことは、すべてが挑戦です。それに打ち勝つには、かなり厳しい措置と監視を徹底して行わない限り、脱炭素社会は実現できません。
(2021年9月15日)
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