本サイトではこれまで、何回かドイツの水素戦略について報告した。それは最終的に、再生可能エネルギーで発電された電気で水素を製造し、それを製鉄など重工業で利用して重工業をグリーン化することを意味する。
ものつくり国として生産をグリーン化して持続可能とするには、今後重要な課題となる。
実際、ドイツの製鉄大手ティッセン・クルップ社は、2025年から年間40万トンを水素を使ってグリーン製造する計画だ。2030年までにそれを300万トンに引き上げるという。
同社の現在の製鉄生産量は、1100万トン。2030年までに、その約30%がグリーン化されることになる。
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鋳物工場の写真。重工業をどうグルーン化するのか。それは、今後の重要な課題だ。 |
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ドイツ環境シンクタンクのアゴラ・エネルギー転換とヴッパータール研究所は昨年2019年11月、共同スタディ「気候ニュートラル産業」を発表した。「気候ニュートラル産業」とは、産業界において二酸化炭素の排出を減らし、二酸化炭素の排出と吸収がplus minusゼロとなるカーボンニュートラルを実現するということ。
スタディは、製鉄、化学、セメントのドイツの中心的な重工業を対象にして、グリーン水素によって早急に重工業をグリーン化する施策を提案している。
ここで重工業とは、製品の素材となる鋼鉄やプラスチックなどの素材を製造する産業のこと。この分野で2050年までに、カーボンニュートラル化して製造することを目指す。
ヴッパータール研究所のマンフレード・フィッシェデック副会長は、ドイツの産業がちょうど2020年から2030年の間に、製造設備に再投資しなければならない時期に達している、ここで気候ニュートラル化するチャンスを逃してはならないとする。
そうなればドイツは、世界の重工業において持続可能に生産する先駆者的な存在になるという。
ただそのためには、莫大な投資が必要だ。製鉄大手ティッセン・クルップのメルツCEOは、産業のグルーン化への切り替えは企業だけでは無理、国家の援助がないと不可能とする。
またドイツの緑の党は、製品で使われる素材に関して、グリーン製造率を規定するなどして、ものつくりのグリーン化を促進する刺激策も必要だとする。
(2020年9月05日)
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