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ドイツのバイオ動力燃料
(2006年4月18日)

ドイツでは現在、バイオディーゼル、バイオエタノール、植物油が生物資源を原料として製造されるバイオ動力燃料として利用されている。2005年の消費量はバイオディーゼル(170万トン)、バイオエタノール(21万トン)、植物油(15万トン)と、バイオディーゼルの消費が極端に多い。ただ昨年当たりから、バイオエタノール、植物油の消費が大幅に増大してきている。2005年のバイオ動力燃料消費が動力燃料消費全体に占める割合は3.4%(前年1.9%)で、6年前の2000年のバイオ動力燃料の消費率が0.3%であったことを考えると、バイオ動力燃料の消費率は6年間で10倍超に増大した。バイオディーゼルを給油できるガソリンスタンドは現在、全国で約1900箇所あるが、バイオエタノールはまだ数カ所程度だ。だが、バイオエタノールの生産増大が期待されることから、バイオディーゼルを給油できるガソリンスタンドは今後、増えていくものと見込まれる。


バイオ動力燃料が普及しているのは税制上の優遇措置があるからだ。ドイツでは、混合せずにバイオ動力燃料だけを燃料として利用するのが多いが、その場合鉱油税(日本の揮発油税に相当)が一切課税されない。そのため、バイオディーゼルは一般の軽油より1リットル当たり10セント(14円相当)ほど安い。2004年1月からは、バイオディーゼルやバイオエタノール、添加剤バイオETBEを混合した場合にも、その混合分に対してだけ鉱油税が課税されないことになり、2004年1月からはバイオ動力燃料を混合(最高5%まで)した燃料も市場に出回りはじめた。


しかし、2005年11月に誕生したキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社民党(SPD)の大連立政権は、取り敢えず2009年までに制限されているバイオ動力燃料に対する税制優遇措置を2006年末までに短縮し、2007年からはバイオ動力燃料の混合率を5.75%に義務付けて税制優遇措置を一切撤廃することで調整している。バイオ動力燃料の混合率が5.75%とされているのは、EU指令2003/30/ECがバイオ動力燃料の消費率を2005年までに2%、2010年までに5.75%とするよう規定しているからだで、ドイツ政府の考えでは、EU指令の義務さえ履行できれば、それで十分ということになる。ただそれでは、バイオ動力燃料の普及にキャップがかかることになることから、農業やバイオ燃料関連産業は猛烈に反発している。特にバイオ動力燃料は、農業の将来にとって非常に重要な製品になると見られるほか、エネルギーの自給問題を考えると、バイオ動力燃料は今後その重要性が益々高くなると見られる。


バイオディーゼルやバイオエタノールなどバイオ動力燃料では、動力燃料を十分に供給するだけの原材料(植物)を栽培できるかどうかが問題だ。ドイツの場合、ドイツ全国のすべての農地でバイオディーゼルの原材料である菜種を栽培したとしても、実際に必要なディーゼル油の15%程度しか供給できないという。


代替動力燃料をさらに多様化させれば、この問題に対応できる。そうしたことから、バイオメタンやE85(エタノール85%、ガソリン15%)、バイオ合成ガスなどにも注目が集まってきている。ドイツでも2006年には、こうした代替動力燃料に対応できるフレキシブル・フューエル車(FFV)が市場に登場してくる見込み。たとえばバイオメタンは、8年以上も前からスウェーデンやスイスで動力燃料として利用されており、オーストリアも利用を開始する見込みだ。バイオメタンはドイツではまだ利用されていないが、ドイツのバイオ・代替動力燃料協会によると、バイオメタンの製造費は、生ゴミから製造した場合で6セント/kWh、生物資源から製造した場合で8セント/kWh程度で、天然ガスと混合して利用してもコスト高にはならないという。バイオ合成ガスはまだ研究開発段階のものが多いが、独ザクセン州フライベルクのコーレン社はバイオマスから合成ガスを製造し、それをさらに液化して『サンディーゼル』という動力燃料を製造している。『サンディーゼル』にはすでに、ダイムラークライスラー、フォルクスヴァーゲンなどが注目している。


ドイツ連邦環境省の資料によると、ガソリンや軽油の化石動力燃料と比較すると、バイオ動力燃料では二酸化炭素を中心として温室効果ガスの排出量を約80%削減できるという。しかしバイオ動力燃料では、原材料である再生生物資源の栽培時に、一酸化二窒素と酸性化の原因となるアンモニアの排出量が増えるという欠点がり、実際これらのガスの排出量が現在増大している。ただこの問題は、栽培方法、輪作方法を改善することによって、中期的には一酸化二窒素やアンモニアの排出量も削減できるようになると予測されている。


なおドイツでは、バイオ動力燃料の消費によって2004年だけで二酸化炭素の排出は397万トン削減された。(福本)


(2006年4月18日)
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