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原子力ルネッサンスの幻想と脱原発へのビジョン  1/4
(2008年11月2日)
1) ヨーロッパにおける原子力発電所の現状

現在、ヨーロッパ(ロシア、ウクライナを除く)では、151基の原子炉が稼働しています。


ヨーロッパでは、1986年に起こったチェルノブイリ事故後、原子力発電所の建設が滞っていました。その突破口を開いたのが、フィンランドです。フィンランドでは現在、2011年完成を目指して、1600MW(16万kW)の欧州加圧水型炉EPRが建設中です。それに続いて、ヨーロッパの原子力大国フランスでも、2006年にEPR型炉の建設が開始されました。


現在、ヨーロッパで建設中の原子炉はこの2基だけですが、ヨーロッパ全体では現在、25-40基の原子炉の建設が計画ないし検討されています。


その中でも、今後まず、原子力発電所の建設が具体的に進行していくことになるのは、東ヨーロッパです。すでに、スロバキアで2基(旧ソ連製加圧水型炉VVER-440/V213)、ブルガリアで2基(ロシア製最新鋭の加圧水型炉VVER-1000/V460)の建設契約が締結され、まもなく建設が開始されます。


東ヨーロッパで原子力発電所の建設が加速しているのは、欧州連合(EU)への加盟条件として、危険性の高いと見られる旧ソ連製の原子炉を最終的に停止するよう求められたからです。そのため、東ヨーロッパではこれまでに原子炉6基が停止されており、今後さらに、2008年末にスロバキアで1基、2009年末にリトアニアで1基停止される予定です。


ただ、今後最も原子炉の建設が急ピッチで進みそうなのは、イギリスです。イギリスでは現在、19基の原子炉が稼働していますが、いずれも老朽化が激しく、2020年までに17基を停止せざるを得ないと予測されています。そのため、ブラウン政権は2018年までに原子炉6基を完成させ、その後も原子炉の建設を続けて、発電に占める原子力発電の割合を現在の18%から40%に引き上げたいとしています。


さらにイタリアでは、チェルノブイリ事故後、政府が脱原子力を決定していましたが、今年の選挙で、ベルルスコーニ政権が復活すると同時に、原子力発電を再開すると発表しました。


脱原発政策を続けるドイツですが、そのドイツでさえも、来年2009年の総選挙で中道右派政権が誕生すると(まだ、何とも判断できませんが)、中道左派のシュレ−ダー政権の下で実現した脱原発政策が撤回されるのは間違いありません。ただその場合、原子炉が新設されることはなく、2020年頃までにすべての原子炉を段階的に停止して廃炉にするという脱原発政策が過去のものとなり、原子炉の寿命を延ばす措置が計画されていくものと見られます。


(2008年11月2日)
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