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原子力ルネッサンスの幻想と脱原発へのビジョン  4/4
(2008年11月2日)

現在、世界は2050年までに、温室効果ガスの排出量を90年比で半減させようとしています。そのためには、原子力発電が必要不可欠だと思っている人たちがたくさんいます。


先ほど、「原子力発電は中期的に温暖化対策に貢献しない」と書きました。2020年頃までに稼働している新しい原子炉がほとんどないからです。


それでは、それ以降であれば、原子力発電は温暖化対策として有効な手段となるのでしょうか。


それも、「否」といわなければなりません。原子力発電は、長期的に見ても、温暖化対策には貢献しません。


その一つの理由は、老朽化した原子炉が最終的に停止されて廃炉されていくこと、原子炉の製造容量に限界があることを考えると、2020年以降に新しい原子炉が稼働したとしても、原子炉の絶対数、絶対容量がそれほど増えていることは、考えられないからです。


また、前述したように投資リスクの問題がある上、経済の動きが今後益々早くなることを考えると、原子力発電所のように大型で、建設に時間のかかる発電方法は魅力を失っていくものと考えられます。


さらに、将来的に原子力発電を無用の長物化していくには、二つの動きが必要だと思いますし、そうした動きが今後益々加速してくると思います。


一つは、省エネ化に向けた生活スタイルの変化です。


ここでは、省エネ技術の開発が重要ですが、そればかりではなく、市民一人一人が省エネ意識を持って、それを実際の生活に定着させていかなければなりません。


照明の光が必要ないのに、照明器具をつけっぱなしにしていませんか。家電製品を待機中のままにしていませんか。自動車を長くアイドリングさせていませんか、などなど。


市民一人一人が省エネに向け、生活スタイルを変えていかなければなりません。


もう一つは、発電拠点の分散化です。


自然(再生可能)エネルギーが普及してくれば、発電拠点は必然的に小型化し、分散化されていきます。しかし筆者は、発電拠点の分散化だけでは不十分で、経済を分散化させて、経済構造を改革していくことも同時に必要だと考えています。


経済が循環する必要最小限のエリアを母体にして、経済を分散化させると同時に、発電拠点を分散化させます。それによって、エネルギーを主体にした小さな経済エリアを確立していきます。そうして、地元にエネルギー関連のサービス業などを育成して、地域経済を活性化させていきます。


たとえば、ドイツ中部のユーンデ(住民750人)という村では、地元の農業から発生する家畜の糞や藁などのバイオマスを使って、バイオマスを中心に村の電力と地域暖房熱源の供給を行い、それだけで村全体のエネルギー需要をまかなっています。こうした試みは、ドイツ各地に拡大しています。


都市部では、都市部の一部の地域だけを対象に、風力、バイオマス、水力、コージェネレーションの設備をネットワーク化して一つの発電所のように見立てて、バーチャル発電所とする試み(ドイツ・ウナ市)も行われています。


こうした試みはまだ試験的な段階に過ぎませんが、今後、さらに拡大していくものと見られます。


現在、温暖化の問題から、世界の目は、原子力発電に向かっています。しかし、これまで検証してきたように、原子力発電が温暖化に対する救世主になるわけではありません。


人類は今後、一つの手段に集中するのではなく、たくさんの試みを行っていかなければなりません。その内の重要な手段は、省エネと自然エネルギーの利用/発電拠点の分散化です。そして、省エネと自然エネルギーの利用が進んでいけば、原子力発電は必然的に時代遅れのお荷物になっていきます。


われわれ人類は、できるだけ早くそのことに気付き、原子力発電から撤退する必要があることを認識しなければなりません。(福本榮雄)

(2008年8月8日に長崎で行った原水禁長崎大会脱原発学習編講演用レジメ。)


(2008年11月2日)
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