2014年10月13日掲載 − HOME − エネルギー・インタビュー一覧 − インタビュー
インタビュー:
アルトゥーア ・ ケーニヒ市長(2)

廃炉中のグライフスヴァルト原発近郊にあるグライフスヴァルト市市長
Q:解雇された職員のための再雇用措置はあったのか

2つにわける必要がある。5号機から8号機の建設に携わっていた作業員は工事会社の社員だったので、そのまま現場を去っていった。

原発で働いていた職員については、いろいろな対策が講じられた。一定の年齢に達しておればそれなりの退職金を支払う、早期定年退職など。若い人材は他の地で職をみつけていた。

当時の状況を見ると、大量解雇はなく、解雇に対して抗議デモなどもなかった。うまく管理しながら職員を減らしていったと思う。


Q:市は廃炉によって得しているか

間接的にはそうだ。世界から廃炉の状況を視察にきており、ノウハウ移転のチャンスが生まれている。廃炉現場から一番近い大きな都市はグライフスヴァルトであり、廃炉に携わる職員の多くがグライフスヴァルトから廃炉現場に通っている。

こうして、グライフスヴァルトはエネルギーの産業基点と密接に関わっている。


Q:原発の閉鎖ということで、その後の発展は他の東独の地域と違う点があるか

いや、ないと思う。他の電気関連工場でも従業員が解雇されており、職を失ってたくさんの人が失業したということで違いはない。


Q:市の再開発の中心は何か

(当時の原発職員の)住宅を解体しなければならなくなったことだ。1万から1万4000人の住民がグライフスヴァルトから離れていったからだ。それで空いた住宅をどうするか。それで住宅(社会主義風の集合住宅)を解体し、緑地化したり、集合住宅の階数を減らすなどして生活環境を整備した。

この整備事業には、国、州から公的補助があった。


Q:何軒くらい解体されたのか

1800軒くらいの住宅が解体された。それで既存住宅の周辺環境を改善した。


Q:廃炉による経済的効果はどうか

ルブミン(原発直近の村)で新しい企業が生まれたりして、エネルギー産業の立地場所として再開発されている。州にとっても洋上風力発電の送電拠点となっている。さらにガス発電所も建設されることになると思う。こうして地域全体に新しい雇用が生まれている。


Q:グライフスヴァルトは、また大学の歴史のある都市だが

そうだ。グライフスヴァルト大学は550年の歴史を誇る。ただ地域に大きな産業がないので、大学には産業に必要なエンジニアを育てる学科が育っていない。

ルブミンとの(技術的な)関係も、そのため限定されている。経営学、物理学、環境関係の分野で関係しているだけだ。そのため、大規模技術の開発などは大学ではできないという問題がある。


Q:その他、研究機関も誘致されているが

それは、直接にはエネルギー産業拠点のルブミンとは関係ないが、核融合の開発でマックス・プランク研究所ができた(日本でいえば国研)ことをうれしく思っている。動物健康研究所もある。この種の研究所は、世界に4つしかない。


Q:こうした研究インフラが若者を引きつけている

そうだ。若者を引きつける要素になっている。研究所や大学を見ればわかると思うが、外国人の職員、研究者、学生もたくさんいる。グライフスヴァルトは小さな都市でドイツの北の端にあるけれども、グライフスヴァルトはその意味で単なる地方都市ではない。


Q:こうした研究学園都市のインフラにどれくらい投資したか

市は、建物には資金を出していない。市は道路、水道設備、送電線などのインフラ整備を行った。その他(建物)は国、州、EUの公的補助によるものだ。

研究インフラに全体で、10億ユーロ以上が投資された。


(グライフスヴァルト市庁舎でインタビュー)
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