2018年8月25日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
エネルギーとデジタル化

再生可能エネルギーへ転換するプロセスにおいて問題となるのは、発電量の変動が大きいという問題だけではない。発電設備が小型化し、発電設備が大幅に増えることもかなりの難題だ。


これらの問題を解決してくれる一つが、デジタル化だ。


たとえば、ドイツ国内に散らばる再生可能エネルギー発電設備をネットワーク化すれば、一つの発電所とみなすことができるようになる。これが、バーチャル発電所だ。


ドイツでは、たとえばARGE Netz社がドイツ国内の再生可能エネルギー発電設備によって総発電容量1800MWとなるバーチャル発電所を運用している。これは、原発にすれば原子炉2基に相当する。


あるいは、デジタル化されたスマートグリッドやスマートメーターによって、電気の供給と需要により柔軟性をもたらすことができるようになる。


このエネルギーにおける柔軟性には、経済的に大きな価値がある。ドイツ工業会(BDI)のエネルギー・インターネット部会のヴァルトマンさんは、その柔軟性を経済財とみなすべきだとする。


ドイツ工業会(BDI)は2007年、エネルギー市場における将来がデジタル化にあるとして、エネルギーにおける情報通信化に特化した部会を設置した。同部会は2009年、エネルギー・インターネット部会と改名され、2013年から大手企業や研究機関の支援を受けて、経済的にBDIから独立した部会となっている。


それによって、ドイツ産業界の一部の利害に依存せず、中立的な立場でエネルギーにおけるデジタル化の問題について産業界全体に提言している。


ドイツ産業界が将来、エネルギー部門におけるデジタル化がいかに重要になるか、さらにドイツの技術力を国際競争力あるものにする上でこの分野で技術革新力を持っていることがいかに重要であるかを認識していることがわかる。そして、その技術革新力を持っているのが、スタートアップだといっていい。


ドイツでは現在、エネルギーのデジタル化でブロックチェーンがとても重要な技術になると見られている。ブロックチェーンはビットコインの中核技術だが、再生可能エネルギー化で分散型構造となるエネルギー市場において、エネルギーの取引と決算に必要不可欠な技術になるとされている。


それに対してBDIのヴァルトマンさんは、エネルギー部門ではブロックチェーンよりは、人工知能(AI)のほうがむしろ将来性のある技術になるだろうとコメントした。ヴァルトマンさんの発言によって、ドイツ産業界がどの方向に進もうとしているかが伺える。

(2018年8月25日)

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