ベース電力は、原子力発電や石炭火力発電によって発電される。日本では、大型水力発電(流し込み)によっても供給される。
このベース電力はドイツでは主に、電力の卸市場で取引されている。この卸市場におけるベース電力の取引価格の推移を示したのが、以下のグラフだ。
これは、ドイツの欧州電力卸売市場のデータをベースに、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学エネルギープロセス工学科がそのスタディで公表した。
図:ベール電力の卸市場における価格の推移(出典:エアランゲン・ニュルンベルク大学エネルギープロセス工学科スタディ)
図中、赤い線を見てもらいたい。
これが、フクシマ原発事故が起こった時点だ。その直後、ドイツは17基中8基の原子炉を停止させた。
グラフを見ると、おもしろいことがわかる。
フクシマ事故以前は、ベース電力の卸価格がかなりの角度で上昇しているのに対し、それ以降、卸価格が急速に下降している。
卸市場では、ベース電力の価格は需要と供給の関係で決まる。取引価格が安くなるのは、需要に対して供給過多になる時だ。
つまり、ドイツでは原子炉が8基止まっても、ベース電力が供給過多になっていたことがわかる。それは、再生可能エネルギーで発電された電力がたくさんあったからだ。ドイツでは、固定価格買取制度によって再生可能エネルギーで発電された電力を優先的に買い取らなければならない。
ベース電力の卸価格はそれ以降、2016年中まで下がり続けた。その後、2017年前半と2018年夏に急上昇する。
2017年前半は、冬の天候が悪くて、再生可能エネルギーによる発電量が減ったこと、さらに予定外の原子炉の停止が続いてベース電力の供給量が減ったことが、その原因だ。
2018年中から再び急上昇したのは、猛暑によって火力発電所と原子力発電所で冷却水が不足し、通常の運転ができず、火力発電と原子力発電の発電量が減ったからだ。
2000年以降順調に増え続けてきた再生可能エネルギーによる発電量が、政府の政策変更で再生可能エネルギーの拡大にブレーキがかかった。それに伴い、2017年以降、火力発電と原子力発電の発電量の減少を再生可能エネルギーによってカバーできなくなっていることも、このグラフから読み取ることができる。
こうして見ると、再生可能エネルギーによる発電量が増えれば増えるほど、卸市場でのベース電力の取引価格が下がる。しかし、その発電量の伸びが十分でないと、火力発電と原子力発電の発電量が減少するのに伴い、取引価格が上昇するほか、火力発電と原子力発電の稼働状況の影響を受けやすくなることがわかる。
(2019年10月09日) |