ドイツでは、将来の自動車が電気自動車に決まったように感じられている。しかし、実際にはまだその他の可能性が完全に排除されたわけではない。
その一つが、水素を燃料とする燃料電池車だ。
ドイツにおいて燃料電池車の研究開発が最大規模で行われているのは、ドイツ南西部カールスルーヘにあるカールスルーヘ・テクノロジー研究所だ。研究所の前身は、ドイツの原子力研究開発の中心カールスルーヘ原子力研究所だった。
研究所では、たとえばヨルダン水素研究グループ長の下で燃料電池バスと水素スタンドの実用化試験が行われている。
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水素スタンドの周辺は、爆発の危険があるのでスマホの使用は禁止だ |
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水素を注入するには、担当係員が必要 |
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水素を注入中の燃料電池バス |
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燃料電池バス2台が、2013年6月から研究所とカールスルーヘ市内を結ぶシャトルバスとして使用されている。バス2台でこれまでに全体で20万キロメートルを走行し、20万人の乗客が利用した。
100キロメートルに必要な水素は、約7.8キログラム。燃料消費は、ディーゼルバスより30%効率がいいという。
燃料となる水素は当初、産業副産物として産出される水素を利用していた。だが現在は需要が増え、再生可能エネルギーで発電された電力の余剰電力で製造される水素も利用している。
ヨルダン研究グループ長によると、燃料電池車は燃料を満タンにした場合の走行距離が電気自動車よりも長く、燃料タンクの重量も畜電池よりも格段に軽い。こうした点を考えると、燃料電池車は自家用車に利用するよりも、長距離トラックやバスなどの大型車、機関車、船などに応用したほうがいいのではないかとする。
ただ水素は、国内で再生可能エネルギーによって発電された電力によって製造する。再生可能エネルギーでは発電量に変動が大きいだけに、余剰電力を貯蔵する方法としてその電気で水素を製造し(Power-to-Gas)、それを燃料電池車の燃料とする。
ドイツの場合、水素の製造はそれを基本とし、はじめから水素製造を目的とはしない。それだけに燃料電池車の普及は、その貯蔵方法がどの程度普及するのか、さらに水素を天然ガス網に入れて使用することもできるだけに、水素の利用方法として今後どの方法が利用されていくのかに大きく依存している。
日本では、水素を国外で石炭火力発電によって発電された電気で多量に製造して、それを輸入することが考えられている。ただそれでは、二酸化炭素の排出を削減することにはならない。何のための燃料電池車なのかと疑わなければならない。
ドイツと比較すると、日本の戦略はよく理解できない。邪道だと思えてならない。
(2019年7月20日)
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