ラーテン町は5つの自治体が一緒になった統合自治体で、人口は1万1000人余り。ドイツ北西部に位置し、オランダとの国境沿いにある。
ラーテンでは、ドイツでも最初の段階から風力発電が盛んだった。古くなった風車はリパワリングされ、現在、風力発電だけで総発電出力は120MWを超える。
太陽光発電でも、学校や役所などの公共施設の屋根を町が住民組合に提供し、それによって町は屋根の賃貸料を得ている。
再生可能エネルギーによる年間発電量は現在、自治体全体で必要な年間需要量の4倍近く(375%)にもなっている。
でもラーテン町の誇りは、共同で地域熱源を供給するために、住民が共同で組合を結成して、配管網を設置、運用していることだ。熱供給の再生可能エネルギー化のほうが、発電における再生可能エネルギー化よりも住民を説得してアクセプタンスを得るのに困難な問題が多いからだ。
きっかけは、バイオガス発電をはじめた農家からだった。発電によって排出される熱を地域で利用してはどうかと提案があった。さらに、もう一軒の農家からもバイオガス発電からの熱を提供するとの申し出があった。
そのため町は、住民が共同でその熱を地元で供給する配管網を設置することを考案する。
さらに、地元の森や農家などで排出される木屑を燃料とする5000kWのボイラー2基を設置して、熱供給量を拡大させた。また中低温の熱源で発電できるORC(有機ランキンサイクル)システムも設置され、熱供給量が拡充された。
現在、700世帯がこの地域熱供給網から熱の供給を受けている。それに伴い、ラーテンでは天然ガスや石油で暖房するよりも、暖房費が30%以上安くなっている。
ラーテン町のヴェーバー町長は、「住民にとって、エネルギー転換のプロセスとそのためのプロジェクトを地元で見ながら、それに一緒に参加していくことがとても大切だ」という。
(2019年1月26日)
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