最終処分を前提にする場合、放射性廃棄物を熱が発生するかしないかで区分するのが実践的だと書いた。
それは、なぜか?説明しておいたほうがいいと思う。
現在、最終処分は地層処分が前提とされている。放射性廃棄物を地下に埋めてしまうということだ。熱を発生する放射性廃棄物は、長期に渡って熱を発し続ける。長期とは、数十年から100年にもなると考えられる。
その場合、熱の発生するものを地下に埋めるとどうなるだろうか。それを想像してもらいたい。
地下が温かくなる。そう思って当然だ。地下が温かくなって、影響はないだろうか。
ここで問題になるのは、地層の熱伝導率だ。熱伝導率とは、地層が熱を伝えやすいか、伝えにくいかということ。熱を伝えやすいとは、熱を外へ逃がすということだ。その場合、地下は熱が逃げるのでそれほど温かくならない。
それに対して、熱を伝えにくい地層では、地層に熱がこもる。熱が外に逃げないので、地層は温かくなる。
地層が温かくなると、どういう問題が起こるか。
たとえば、地層の上部に粘土があると、粘土が熱で乾燥し、粘土に亀裂が入る可能性がある。粘土に亀裂ができると、その亀裂が放射能汚染の漏れる原因となる。
そうなると、最終処分は安全ではない。
熱を発生する放射性廃棄物は、十分に冷やしてからでないと地層処分できない。ただ、どの程度冷やすかは、処分する地層の熱伝導率によることもわかる。
熱伝導率の高い地層では、多少熱を発しても熱を逃がしてくれるので、熱は地層に残らない。
その点、熱を発しない放射性廃棄物では熱で地層処分に問題が起こることはない。
これで、地層処分を前提にすると、熱を発するか発しないかで放射性廃棄物の取り扱いが違うことがわかると思う。
熱を発しない放射性廃棄物は、そのまま最終処分しても問題ない。それに対して、熱を発する放射性廃棄物は、十分に冷やしてから最終処分しなければならない。
十分に冷やすとは、最終処分する前に地上で中間貯蔵する期間を長くするということでもある。
(2020年3月10日) |