これまで、放射性廃棄物を最終処分する問題に関してまず放射性廃棄物を定義した。その後に、地層処分でいいのか、処分期間はどれくらいか、処分に必要な容器は大丈夫かなどの問題について指摘してきた。
これらの問題を考えると、最終処分する放射性廃棄物が少なければ少ない方がいいことに気づく。さらに、できるだけ早く最終処分すべき放射性廃棄物の総量がわかったほうが、最終処分地を選定する上でも適切なことがわかる。
放射性廃棄物の総量については、現在の原子力発電の状況や今後の発電所新設計画などから推定できるのは確かだ。だから、それでいいではないか。そういう意見もあると思う。
でも、ぼくはそうは思わない。
今後最終処分の問題を解決するには、最終処分すべき放射性廃棄物の総量ができるだけ早くわかったほうが計画を立てやすい。最終処分に適する場所が限定されている。それだけに、できるだけ安全な処分を実現するには、早く廃棄物の総量を確定させたほうが計画に安定性が生まれる。
これは、脱原発のことを考えてそういっているのではない。安全に最終処分することを最優先にして、そういっている。いや、そうしざるを得ない。最終処分の安全性を考えると、再処理によって発生する高レベル放射性廃棄物をできるだけ減らすことも大切になる。
原子力発電では、放射性廃棄物が排出されるのを避けて通ることができない。ただその放射性廃棄物を安全に処分するには、排出される放射性廃棄物の量を早く確定させることが、できるだけ安全な最終処分地を選定して計画する上で大前提となると思う。
再処理によって核燃料サイクルを実現することも、不可能だとわかってきている。原子力発電を永遠に継続することはできない。
それに備えて、原子力発電の出口戦略を考えなければならない。
その出口戦略からすれば、できるだけ早く原子力発電から撤退したほうが、最終処分においてより安全性を追求することができることがわかる。
こうした視点からも脱原発について議論することが大切だと思う。
(2020年5月12日) |