ドイツは、高レベル放射性廃棄物の最終処分候補地を再選定するに当たり、これまで最終処分問題を管轄していた放射線防護庁(BfS)を分割。放射性廃棄物の処分を管轄する新しい行政機関として放射性廃棄物処分安全庁(BASE)を設置した。
BASEは、住民参加による最終処分候補地の選定プロセスを管理、監視するほか、放射性廃棄物の処分(中間貯蔵と最終処分)を管理、監督する。
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放射性廃棄物処分安全庁(BASE)の建物(左) |
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誤解のないようにはっきりさせておくが、BASEが実際に最終処分候補地の選定と最終処分を行うわけではない。それは、国営会社である連邦最終処分機構(BGE)が科学的に行う。BASEは行政機関として、それを管理、監督する。
住民参加によって最終処分候補地を選定するプロセスにおいて、BASEはどういう役割を果たすのか。それが、今一つはっきりしない。
住民参加において重要な役割を果たすのは、国家随行委員会(NBG)だと書いたことがある。NBGは、最終処分候補地の選定プロセスを監視、監督するBASEと地元住民(社会)を橋渡しする。
実は、NBGが行うことも内容がはっきりしない。具体的には、BGEが進める最終処分候補地の選定において、住民側(社会)に不満や異議などがある場合、NBGはオンブズマンとしてBASEに改善ないし、選定プロセスのやり直しを勧告することができる。ただNBGには法的権限がないので、BASEにはNBGの勧告を聞き入れる義務はない。
この点が、NBGの最大の弱点だともいえる。
最終処分候補地の選定に関わる説明会など法的に規定された住民参加に関わるイベントは、すべて住民代表によって計画され、準備される。
そのための住民代表の選出や準備会議など、住民参加に必要な催し物やその手続き、説明会場などのインフラはすべて、BASEが市民代表が決議したように準備する。
今、中間報告書の説明会の準備が順調には進んでいない。その問題について、BASEのケーニヒ長官と立ち話をして、簡単に聞いたことがある。その時長官は、準備が進まないのは住民側の問題だという口ぶりだった。BASEは住民側の問題に、介入することはできないということだと思う。
ケーニヒ長官はその時、「BASEは住民に対して、(最終処分候補地の選定で)サービスを提供するだけだから」といったのはとても印象的だった。なるほどと思った。
それは、住民参加のプロセスでは主役は住民であり、行政機関であるBASEはそれを裏方としてサポート、バックアップすることしかできないのだと思う。
(2021年3月23日) |