これまで、住民参加を基盤にして高レベル放射性廃棄物の最終処分候補地を再選定することに関与する機関について書いてきた。
取り上げたのは、放射性廃棄物の処分を管轄する新しい行政機関である放射性廃棄物処分安全庁(BASE)と、最終処分候補地の選定プロセスにおいてプロセスを監視、監督するBASEと地元住民(社会)を橋渡しする国家随行委員会(NBG)だった。特に、NBGは住民参加という観点ではとても重要な機関だ。
ドイツが最終処分候補地を選定する上で、もう一つ忘れてはならない機関がある。それは、実際に最終処分地としての適性を調査し、最終処分候補地を提案する機関だ。連邦最終処分機構(BGE)という。国営会社だ。連邦最終処分会社といってもいい。このほうがドイツ語を直訳した感じとなる。ただそれでは、民間会社だと思われる心配があるので、ここでは会社ではなく、機構とした。
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写真は、ゴアレーベンの最終処分調査坑。BGEの前身DBEは、ゴアレーベンで岩塩層が最終処分に適するかどうかの適性調査をしていた |
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BGEは、国の委託を受けて、最終処分候補地の調査と選定、さらに最終処分を実際に行う。
BGEは、2016年7月に設立された。連邦議会の最終処分委員会の諮問に基づき、最終処分候補地の選定と最終処分を国の管轄下で行い、一本化することが決まったからだ。
その後の2017年12月、ドイツが最初に高レベル放射性廃棄物の処分に岩塩層が適するかどうかを調査するために設置した最終処分場アッセの運用会社と、それまで放射性廃棄物の最終処分地の調査、建設、運用を行なっていたドイツ最終処分会社(DBE)、さらにドイツ放射線防護庁の最終処分部門が、BGEに統合された。
DBEは元々、最終処分地の建設と運用を目的に国営会社として1979年に設置された。しかしその後、DBEは民営化され、原発を所有する電力会社などが共同で設立した核サービス会社(GNS)に主導権が移行していた。
GNSは、放射性廃棄物を入れるキャスクを開発、製造するほか、使用済み核燃料のほか、英仏でドイツの使用済み核燃料を再処理された後に出た高レベル放射性廃棄物を英仏からドイツの中間貯蔵施設に輸送する業務などを行っている。
ドイツ政府はDBEがBGEに統合されるまで、25%の株しか所有していなかった。その株を所有していたのは、ドイツ財務省の管轄で、旧東ドイツの原発を廃炉する北エネルギー会社だった。
BGEの設立とともに、最終処分候補地の選定と最終処分を国が責任を持って行うことをはっきりさせたことになる。
ただ住民参加によって最終処分候補地を選定するという点では、住民側がBGEによる選定プロセスを十分に監視できず、その選定プロセスに影響を及ぼすことができないという問題も明らかになっている。
BGEがすでに最終処分候補地の選定において中間報告書を発表したのは、すでに報告した。その中間報告に関し、BGEは住民に説明義務があり、その説明会を3回行うことが法的に義務付けられている。その説明会は、住民側が準備して行われるが、その準備が進まず、遅れている。そのため、当初予定した日程で説明会を行うことができない状態になっている。
この状況において、住民側にBGEの調査、選定作業をストップできる権限はない。つまり、中間報告に対する説明義務とは関係なく、BGEの調査、選定作業が進められる。選定プロセスが次のステップに進んでいくということだ。
住民側が中間報告に疑問、異議を持っても、BGEの作業は後戻りしない。それでは、住民参加の権利が無視されるのと変わらない。
この点は、環境団体などが問題視している。
(2021年3月30日) |