2021年4月13日掲載 − 脱原発
最終処分候補地の選定で異なる意見を生かす

これまで高レベル放射性廃棄物の最終処分候補地を住民参加によって再選定することに関与する機関として、放射性廃棄物処分安全庁(BASE)と連邦最終処分機構(BGE)、国家随行委員会(NBG)について書いた。


NBGは、住民参加において公衆のオンブズマンのような役割を果たすことも書いた。最終処分候補地の選定においては、住民、特に地元住民との間で意見の相違が生まれ、争いごとにまで発展するのが目に見える。


それがそのまま放置されると、住民が納得しないで、反対したまま最終処分候補地を決定しなければならなくなる。それでは、住民参加で最終処分候補地を選定したことにはならない。


ドイツ連邦議会の下に設置された最終処分委員会の諮問案は、最終処分候補地の選定プロセスにおいて、こうした意見の違いや争いを把握、管理して、それをプロセスに取り込んで、より生かす文化を築くことを提案している。


そのために、設置されたのが中立的な立場から最終処分候補地の選定プロセスに関わる「住民参加オンブズマン」といわれる役職だ。2019年8月からハンス・ハーゲドーンさんが務めている。NBGが任命した。


ハンスさんは元々都市開発を専攻し、都市開発において建設側と住民側の争いを仲介するコンサルタントとして働いてきた。その意味では、争いごとを仲介するプロといってもいい。


ハンスさんは、まず争いごとにおいてそれぞれの意見を分析して、両者に対して意見の違いをはっきりさせることが大切だという。争いごとでは、往々にしてそれがはっきりしないまま争っている場合が多い。それでは、争いは続くだけだ。


お互いが相手方の意見をよく理解することで、当事者同士がお互いに歩み寄る可能性が生まれる。そうすれば両者にとって、お互いを尊重したよりよい解決策を見つけることができるようになるという。


これまでの経験からして、最終処分候補地の選定プロセスにおける住民参加オンブズマンの役職は、ハンスさんにとってまったく新しいことではない。


ただ最終処分候補地の選定プロセスでは、それに関与する関係者が多様である。前述したNBGとBASE、BGEばかりではないからだ。今後、候補地が絞られると、地元自治体とその周辺の自治体、さらにその住民のほか、反原発団体や環境団体などたくさんのグループが関与してくる。


それからすると、選定プロセスでの仲介はより複雑だ。ハンスさんにとっても、「新しい挑戦」だという。


ハンスさんは、科学的に分析されたことや相手方の主張に疑問を持つのも大切だという。そこから、科学的な分析がさらに深まるほか、相手方の主張でも再検討される可能性が生まれる。それが選定プロセスにおいて、いろいろな意見を取り入れながら、選定プロセスをより改善することにつながる。


こうすれば、すべての意見に耳を傾け、それがどこかで生かされる。関係者がそう実感することも重要だ。その結果、当事者がお互いに尊重し、信頼関係を築けるようにもなる。


それが、争いごとや異なる意見を生かす文化ということなのだと思う。


(2021年4月13日)
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関連サイト:
住民参加オンブズマンであるハンス・ハーゲドーンさんのインタビュー(ドイツ語)
連邦最終処分機構(BGE)のサイト(ドイツ語)
国家随行委員会(NBG)のサイト(ドイツ語)
放射性廃棄物処分安全庁(BASE)のサイト(ドイツ語)
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