小型原子炉は、モジュール型だといわれる。モジュール型とは、どういうことなのだろうか。
原子炉がモジュールに分かれ、組み立てが簡単なわけではない。ぼくが理解する限り、小型原子炉自体が、いくつもの小さいモジュール原子炉で構成されているわけでもない。
小型原子炉をいくつも組みわせれば、出力の大きな原子炉になるということだ。最高12基まで連結することができるという。つまり、小型原子炉自体が一つのモジュールユニットとして、大型原子炉を構成できる要素なのだ。
大型原子炉を構成する小型原子炉がすべて、その場にある必要もないと思う。各地に分散して設置しても、小型原子炉をネットワーク化してバーチャル大型原子炉とすることもできると思う。でもそうすると、かなりのコスト高だ。
それが可能であれば、再エネによるバーチャル発電所とも似ている。
開発中の小型原子炉の出力が、8万キロワット以下だという。この出力だと、最近陸上風力発電で普及している6000キロワット級の大型風車の10倍強に相当する。
大型原子炉をいくつもの小型原子炉で構成させれば、核燃料交換のために原子炉全体を停止させる必要がなくなる。小型原子炉毎に核燃料を交換できるので、原子炉本体は稼働したままだ。燃料交換する小型原子炉だけを停止すればいい。
でも大型原子炉本体の安全性を考えると、これまで通り本体全体を停止して定期的に検査する必要がある。その定期検査の時に、まとめて燃料交換すれば、従来の原子炉と同じだ。となると、この点において小型原子炉のメリットは、それほど大きいとは思えない。
小型原子炉のメリットは、もっと違うところにあるはずだ。
小型原子炉毎に停止させることができるので、小型原子炉単位で、大型原子炉の出力を調整することができる。そのため、再生可能エネルギーによる発電電力量が急に増えると、小型原子炉毎に制御棒を入れて緊急停止すれば、再エネの変動にすぐに対応できる。
ただこれは、停止する時だけの利点だと思う。一旦停止した原子炉を再稼働させるには、安全性を再チェックするなどいろいろなプロセスを経る必要がある。小型原子炉であっても、停止後すぐにボタン一つで再稼働できるというものではない。それでは、再エネによる発電電力量のテンポの速い変動には、うまく対応できない。この点でも、小型原子炉の利点は限定的だ。
小型原子炉であっても、1回止めて再稼働する時に発生するコストはばかにならない。大型原子炉の出力調整が可能となっても、それによるコストが発生するのは間違いない。
小型原子炉を何度も何度も停止したり、再稼働したりしていると、小型原子炉の寿命を短くする心配がある。小型原子炉の寿命はどの程度なのか。この点にも疑問が残る。
小型原子炉の一番の魅力は多分、原子力発電であっても出力調整できるように工夫したところにあるのではないかと思う。再エネによる分散型電力システムに対応できることが売りなのだと思う。でも再稼働の手間を考えると、それが本当に利点なのかどうかは、ちょっと疑問だ。
ぼくには、それほど魅力あるものとは思えない。
(2021年6月22日) |