2021年5月01日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
独憲法裁判所、気候保護問題で歴史的な判断

ドイツ憲法裁判所は2021年4月29日、ドイツの気候保護法の一部を違憲だとする判断を公表した。Fridays for Future活動に参加する若者たちなどが、環境団体などの支援を受けて、2019年12月に制定された気候保護法の内容が不十分として憲法裁判所に訴えていた。


気候保護法は、政府与党の代表が2019年9月20日に気候変動対策について妥協した内容に基づいて制定されていた。若者たちは、ちょうどその交渉期間中、ベルリンの連邦首相府周辺などで気候保護の強化を求めてデモをしていた。だが妥協案は、若者たちの要望が認められない、経済界に甘い政策になっていた(独政府、気候保護法の基本内容を決定)。



憲法裁判所の判断は、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を1990年比で2030年までに55%削減するとした目標については問題ないとした。ただ2031年から、二酸化炭素の排出を実質ゼロとするカーボンユートラルを達成する2050年までについて、法律に具体的な政策が規定されていないのを違憲だとした。


裁判所は2022年末までに、2031年からの具体的な短期政策を法律によって細かく規定するよう求めた。


憲法裁判所が基盤にしたのは、ドイツの憲法に相当する基本法の第20a条。そこには、こうある。


国は次の世代に対する責任においても、立法権による合憲な秩序の枠内で、執行権と裁判権による法律と権利の基準に基づいて、自然な生活基盤と動物を保護する

この条項に基づき、憲法裁判所は自由を守るため、気候変動に対して予防措置を講じなければならないとする。ただ温室効果ガスを現在十分に削減せずに、その削減負担を後の世代に押し付けるのは、後の世代の自由を奪うことになる。将来においても、温室効果ガスを削減する負担が適切で、合憲であることを、現在の気候保護政策においてすでに考慮しなければならないという。


これは、気候変動が今後さらに激しくなることが予想される中、現在の気候保護政策において現世代の自由が制限されるのは、世代間の公平さを考えると、憲法上適切だということでもある。


今回のドイツ憲法裁判所の判断は、2つの点において歴史的だと思う。


一つは、地球温暖化、気候変動を認めない層がある中で、地球温暖化が起こっており、気候が変動していることを認め、それに対して今対策を講じるのは合憲だとしたことだ。


二つ目は、気候保護対策を講じるに当たり、その負担を世代間で公平になるように分担しなければならないとしたことだ。つまり、今の政策においても、世代間の公平さを考え、後の世代が負担増とならないように、今の世代に対してもそれ相応の負担を強いなければならないとした。


それに伴い、気候保護政策の強化を求める若者たちの主張が正当であり、合憲であると認めたことにもなる。


この判断は画期的どころか、歴史に残るものだと思う。すごい!気候保護政策の転機になってもらいたい。


問題は、政治が今後、どう応えられるかだ。


(2021年5月01日)
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