ドイツの二酸化炭素など温室効果ガスの排出量が、気候保護法で規定された排出量を上回り、ドイツの気候保護政策が後手に回っているのは、すでに前回報告した(「ドイツはここ数年、二酸化炭素排出削減目標を達成できない」)。
それは、特に過去10年、ドイツ政府が気候変動に対して十分な対策を講じてこなかったからである。そのツケがここにきて、顕著となっている。
そのツケを取り戻すため、ドイツ政府はこれまでにない速度で気候保護対策を講じなければ、ドイツが目標とする2045年までに二酸化炭素等の排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルを実現することはできない。
1カ月前に就任したばかりのロベルト・ハーベック経済気候保護大臣(緑の党)は2022年1月11日記者会見を行い、そのための基本方針を公表した。
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2022年1月11日の記者会見で話すロベルト・ハーベック経済気候保護大臣 |
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注目されるのは、再生可能エネルギーで発電される電力の割合を2030年までに、これまでの法的目標である65%から80%に引き上げることだ。現在はまだ、50%にも達していない。
そのためには、陸上風力発電を拡大する必要がある。全国土の2%を風力発電に利用することを規定するほか、設置許認可の手続きを大幅に加速させるという。今のところ、2%規定に同意している州は2州にすぎない。大臣はこれから各州と話し合いを続け、説得するとしている。
太陽光発電では、自然保護基準を遵守しながらも、メガソーラーの設置を加速させる。さらに新設される工場などの事業所の屋根に、ソーラーパネルを設置することを義務付ける。個人住宅の屋根への設置義務化は見送られるが、インセンティブ政策を強化して、個人住宅のソーラーパネル化も促進する。
もう一つは、2030年までに熱供給の50%をカーボンニュートラル化することだ。現在、熱供給における再エネ率は15%程度にすぎない。2025年から新設される建物の暖房では、最低65%を再エネ化することを規定する。
これまで再エネ電力の固定価格買取制度(FIT)によって、再エネ賦課金が電力料金に加算されていた。それが2023年から電力料金に加算されず、政府の税収で補填される。
なお再エネ賦課金には、熱供給と交通部門から排出される二酸化炭素に2021年から課金されている二酸化炭素賦課金による収入が当てられる。それによって2022年の再エネ賦課金は、前年より約40%下がった。
さらに産業のカーボンニュートラル化に向け、それを支援するための法的な前提条件が規定されるという。
大臣は、これらを実現するのは「スポーツ的な(スピードを求められる)課題」とし、十分に社会的な議論をして、弱者が不利にならないように社会的に実施する必要もあるとする。経済省のプレスリリースで大臣は、「これまでより3倍速いスピードが必要」だとしている。
これらを規定する法案ないし法改正案はまず、今年2022年4月中頃までに内閣に提示され、決議される模様だ。その他に残った課題については、今年末までに法案や法改正案が作成されるという。
(2022年1月15日)
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