2023年1月14日掲載 − HOME − 脱原発一覧 − 記事
ドイツで最終処分候補地の選定が大幅に遅れる可能性

ドイツの高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定を規定しているのは、最終処分候補地選定法だ。同法は2013年7月に制定されたが、ドイツ連邦議会の最終処分委員会がまとめた諮問書に基づき、2017年5月に改正された。


その改正版が、現在進行するドイツの最終処分候補地選定の基盤になっている。


同法は、最終処分地の選定を2031年までに終えるよう努力するとしている。しかし同法改正版の元となる最終処分委員会でさえも、2031年まではまず無理との見解を示していた。


最終処分地としての適性を調査して最終処分候補地を提案する機関が、連邦最終処分機構(BGE)という国営会社だ。BGEは文献調査から、2020年9月に最終処分候補地域を中間発表した。ただ選出された地域はドイツ全土の半分以上に渡る。現在それをさらに、絞り込む作業が行われている(第一段階)。


第一段階では最高10の地域に絞り込まれる予定。今のところその作業は、2027年中に完了する予定だ。


その後、絞り込まれた最高10の地域で現地地上調査が行われ、そこからさらに2地域に絞り込まれる(第二段階)。残った2地域において地下のボーリング調査が行われ、最終的に最終処分候補地が選出される(第三段階)。


連邦最終処分機構(BGE)は2022年12月、現段階で第二段階と第三段階に必要と見込まれる期間を公表した。それによると、暫定的に選定される地域の数、選定された地層の種類、ボーリング調査の方法などにより、第二段階に10年から13年、第三段階に5年から23年必要になるという。


最悪のシナリオでは、最終処分候補地の選定が終わるのは、2063年となる。最終処分候補地選定法が努力目標とするよりも30年以上も後になる勘定だ。


その日程プランは今後、放射性廃棄物の処分を管轄する行政機関である放射性廃棄物処分安全庁(BASE)によって審査される。だが、最終処分候補地の選定が目標通りに進まないのは明らかだ。


それに加え、地下地層における放射性廃棄物の最終処分に関して今、周辺状況にも変化が起こっている。


ウクライナ戦争に伴うエネルギー危機により、国内でフラッキングを行って天然ガスを産出しようとする動きがある。さらに気候変動の問題から、排出された二酸化炭素を地下に貯留する技術(CCS)に対する期待も大きくなっている。


これらは地層を利用するため、地層最終処分と競合することになる。


さらにウクライナ戦争において原発が攻撃対象になったことから、地上の乾式中間貯蔵施設が攻撃された場合、中間貯蔵期間中に使用される保管容器(キャスク)も含め、中間貯蔵の安全性に問題がないか検討されなければならない。


最終処分候補地の選定にこれまでの目標以上に時間を要することに伴い、新たな問題も起こる。


一つは、最終処分候補地を絞り込むのに時間を要するので、その間に一般公衆の最終処分に対する関心が薄れていくことだ。そうならないようにするには、どうすべきかのか。これも、今後の重要な課題だ。


もう一つは、選定に時間がかかるとは、中間貯蔵にも時間がかかることを意味する。その場合、中間貯蔵施設とキャスクの耐久性に問題が発生しないのか。許可された施設の運用期間を超えてしまう場合、法的手続き上どうすべきかも検討しなければならなくなる。


最終処分には、とても長い時間がかかる。安全を第一に考えると、選定に時間がかかるのは致し方ない。しかし時間がかかればかかるほど、また新たな問題が起こる可能性もある。


何とやっかいなものを抱えてしまったのかと、思わざるを得ない。


(2023年1月14日)
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関連サイト:
連邦最終処分機構(BGE)のサイト(ドイツ語)
放射性廃棄物処分安全庁(BASE)のサイト(ドイツ語)
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