|
40年以上も原子力発電による放射性廃棄物処分の問題に取り組んでいるスイス人の地質学者で社会学者でもあるマルコス・ブーザーさんは、放射性廃棄物の中間貯蔵についても地層での貯蔵を勧めている。
その一つの理由が、中間貯蔵期間が長期化しているからだ。
中間貯蔵といっても、何のことかよく知らない人も多いと思う。
マルコスさんによると、原発が構想された当時、中間貯蔵の必要性は認識されていなかったという。それが、放射性廃棄物をどう処分するか具体的に構想すると同時に、最終処分地を選定するのに時間がかかることがわかると、処分するまで放射性廃棄物を中間的に貯蔵して保管しておかなければならないことが認められるようになる。
それまで中間貯蔵ということばは、どこにも出てこない。
原発が稼働中、圧力容器から取り出された使用済み核燃料はまず、貯蔵ブールに入れて水中で冷却される。貯蔵プールが一杯になると、一部の使用済み核燃料を搬出して、貯蔵プールに使用済み核燃料を入れるスペースをつくらなければならない。そうしないと、燃料交換ができない。そのため、原発の敷地内に貯蔵プールから搬出された使用済み核燃料を中間的に保管する施設も必要になる。
特に使用済み核燃料を再処理する場合、原発のサイト内に使用済み核燃料を保管して、再処理施設に直接搬出したほうが効率がいい。これも、原発サイト内の中間貯蔵の必要性がわかってようやく、認識されるようになる。
たとえ最終処分場があっても、放射性廃棄物を最終処分場に入れるには、その順番がくるまで、放射性廃棄物を最終処分場周辺に保管しておく必要がある。それも最終処分の方法がはっきりして、認識されるようになる。
廃炉においても、放射能で汚染された部材を除染するには、その順番がくるまで汚染されたものを中間的に保管しておく場所が必要になる。廃炉は、現場に中間貯蔵施設がない限り、成り立たない。
これらの現実からわかるように、中間貯蔵というのははじめからその必要性を認識して構想されたものではない。むしろ必要性が認められる毎に、場当たり的に構想されたものにすぎない。
|
 |
|
ドイツ北東部にあるグラウフスヴァルト原発では現在、廃炉工事が行われている。現場には中間貯蔵施設があり、施設内のホールの一つには、原子炉から取り出された蒸気発生器と圧力容器がたくさん並んでいた。圧力容器はまだ放射線量が高いので、青く塗られた鋼鉄の鉄板がまかれている。蒸気発生器と圧力容器は放射線量が下がるのを待って破砕され、除染される |
|
中間貯蔵するには主に、プール式と乾式がある。
プール式とは、貯蔵プールと同じように、使用済み核燃料を水中で冷却しながら保管する。しかしこの方法では、各部材が水で腐食しやすい。日本のように地震のあるところでは、地震でプールに亀裂が入って水が失われるなどの重大な弱点もある。長期に保管することには向かない。
乾式では、使用済み核燃料をキャスクといわれる輸送・保管容器に入れて、それを倉庫に入れて保管する。倉庫内では気圧を大気圧より下げてあるので、浮遊する放射性物質は外に放出されない。ただ倉庫は、飛行機の墜落などのテロ攻撃に耐えるものではない。キャスクの強度だけで安全性を維持しているにすぎない。
こともあろうか地震の心配のある日本において、乾式中間貯蔵が行われていない。使用済み核燃料の多くは、貯蔵プールに入ったままか、プール式中間貯蔵によって水中で保管されている。地震国であるにも関わらず、中間貯蔵の安全性を無視し、まったく配慮していない。
ドイツでは、乾式中間貯蔵が主流になっている。キャスクと中間貯蔵施設は運用期間として40年を基準にして、設計、許可されてきた。しかしドイツにおいては、最終処分候補地の選定が2060年代までずれこむ見込みだ。その結果、キャスクと中間貯蔵施設の中には、その運転許可が2030年代後半に切れてしまうものが出てくる。
たとえ2060年代に最終処分地が確定しても、それから使用済み核燃料を地層に搬入するまでにはまだ、最低でも40年かかる。
これら中間貯蔵に必要な期間を考えると、中間貯蔵には最低でも120年見込んでおかなければならない。しかしこれまで、キャスクも中間貯蔵施設も長期の使用を考えて設計されたわけではない。中間貯蔵の長期化を事前に予測していなかったため、そのための研究開発も行われてこなかった。
たとえばキャスクは、中性子線などの放射を受けている。そのため中間貯蔵の長期化で素材が劣化して、強度を失ってしまう心配がある。キャスクはシーリング材を使って密封されているが、中間貯蔵が長期化した場合、シーリング材がどの程度の期間、耐久性を保持できるのか。それもわかっていない。
シーリング材を交換できるように、中間貯蔵施設内にそのために必要な密封室が設置されていないのも問題だ。実際、シーリング材を交換するなどキャスクの修理室を設置している中間貯蔵施設は、ごくわずかしかない。
シーリング材が機能しないとキャスクの密封性が失われ、放射性物質がキャスクから放出されるだけだ。
最終処分候補地の選定が難航している国が多い。ただ最終処分候補地の選定に時間がかかればかかるほど、中間貯蔵が長期化する。しかしそれに備えた適切な対策はこれまで、まったく講じられていない。
この現実に直面し、運転許可の切れるキャスクと中間貯蔵施設の運転をどう続けるのか。中間貯蔵の長期化に向けた新しい中間貯蔵構想なくして、安全な中間貯蔵は保証できない。
キャスクと中間貯蔵施設の運転許可が十分な根拠もなく、更新されるだけで終わっってしまうのではないかと、ぼくは心配している。
場当たり的に対応してきた中間貯蔵の問題が、ここにきて深刻な問題になっている。
(2023年6月29日) |