ドイツは脱原発を達成し、発電する商業炉はもう動いていない。廃炉も進み、放射性廃棄物を処分しなければならない。
ドイツは放射性廃棄物を地層処分し、使用済み核燃料とガラス固化体(再処理によって排出された廃棄物)の高レベル放射性廃棄物に対し、最終処分期間を100万年と規定している。
放射性廃棄物を地下層に埋めて処分場を密封し、100万年地下に寝かせておく。その間に、放射性物質が崩壊していくのを待つということだ。最終処分場は100 万年間管理、監視され、その後に解放され、もう管理されない。
それに対し、最終処分場が完成し、処分場への廃棄物の搬入がはじまっているフィンランドは、最終処分期間を 10 万年としている。すでに最終処分場の選定を終えたスウェーデンも、10万年とする。
日本はフィンランドをお手本に10万年を基準にしていると見られる。しかし管轄の資源エネルギー庁の資料では、数万年以上としか記載されていない。
最終処分期間に10倍もの大きな違いがあるのは、なぜなのか。
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写真は、地層処分調査目的に岩塩層に設置された地下坑道。ドイツ北部のゴアレーベン調査坑で撮影。ゴアレーベンの岩塩層は、最終処分には適さないとして最終処分候補地から除外された |
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それは一つに、半減期の長いプルトニム などの影響をどう評価するかで違いが出たからだと見られる。プルトニウム 239 の半減期は 2 万 4000 年余り。放射能は 約2 万 5000 年後に半分弱に、5 万年後 に4分の1、7万5000年後に8分の1、10万年後に16分の1になっているはずだ。
処分期間を10万年とするのは、プルトニウム の放射能が 10 万年後に 16 分の 1 に下がっていればいいと考えているのだと思う。 ドイツはそれに対し、10万年ではまだ不十分だと評価する。
もう一つ重要な違いがある。それは、放射性廃棄物(核のゴミ)を地下に保管して遮蔽する構想の違いだ。
フィンランドとスウェーデンは核のゴミを、自然の地層による自然バリアと人間の技術によって人工的に造られる人工バリアの両方で、地下で遮蔽すると構想している。日本も同じ構想だと見られる。
それに対しドイツは、人工バリアに依存せず、自然バリアだけをベースにして遮蔽することを規定している。
もちろんドイツでも、核のゴミは最終処分用の容器に入れられる。しかし容器は年月が経つとともに劣化し、いずれ崩壊する。それ以外に処分層の上に人工的に遮蔽層を設置しても、長期的な耐久性はない。次第に遮蔽機能が失われ、いずれ崩壊する。
それを考え、ドイツは自然バリアを基盤にした最終処分を規定し、それに適した地層のある場所を探索している。
最終処分場の安全性から見ると、自然バリアだけに頼ったほうが安全だと見られるが、どうだろうか。
(2024年11月26日) |