2024年6月05日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
ドイツは2050年までに脱炭素化できない

気候保護問題を担当するハーベック経済相(緑の党)は今年2024年3月、昨年二酸化炭素などの温室効果ガスの排出が記録的に削減されたことをベースに(「ドイツ、2023年に温室効果ガスの排出を前年より10%削減」)、ドイツの気候保護政策が順調に機能し、今のところ政策を変更する必要がないと自慢したばかり。


ただ2045年までに脱炭素化することを目標とする気候保護法が改正され、気候保護政策をある意味で規制緩和することになった。改正法はすでに国会を通過し、ドイツ大統領が署名すれば成立する。


改正のポイントは、各部門毎に二酸化炭素の排出削減目標を規定し、その達成度に応じて毎年各部門毎に適切な対策を講じることになっていたが、それを法的に規定された二酸化炭素の排出量が全体で守られておれば、それでいいとするもの。


特に、交通と建物からの排出量が法的な規定通りに維持できないことから、その他の部門での排出量で相殺してよしとするある意味で『トリック的な方法』を導入することになった。


それによって、法的に規定された排出量が守られなかった場合の責任が曖昧になったのも事実だ。


今回改正気候保護法が成立するのを前に、気候保護を担当する経済気候保護省は政府の気候保護計画を順次審査することになっている政府の第三者機関である気候問題専門家協議会に、改正気候保護法による影響を審査させていた。その審査結果が2024年6月3日、公表された。


それによると、政府の2021年から2030年までの二酸化炭素など温室効果ガスの削減目標は達成できないばかりか、政府が目標とする2045までどころか、2050年までにも脱炭素化できる見込みはないとの厳しい判断が下された。そのため気候問題専門家協議会は、早急に追加施策を講じるよう求めている。


ドイツはEU(欧州連合)に対して、温室効果ガスを2030年までに1990年比で65%削減することを約束しており、それが達成されないとEUに対して莫大な違約金を支払わなければならなくなる。


ぼくはすでに本サイトにおいて、ぼくが生きている間に脱炭素化社会を体験したいと思い、2045年までの脱炭素を目指すドイツに期待していたが、それも諦めざるをえないと書いた(「脱炭素社会を体験したかったけどなあ」)。それは、データからそういったのではなく、ドイツ社会、ドイツ人の気候保護に対する一般的な意識や気質などからそう思ったのだった。今回はそれが、専門家がデータによって裏付けたことになる。


気候問題専門家協議会は特に、政府が古いデータや事実を基盤に気候保護の進捗状況を判断し、それをアップデートしていないと批判する。


たとえばドイツ政府はコロナ対策で準備された基金の資金を気候保護・構造改革基金に振り向けていたが、憲法裁判所がそれを違憲と判断したことから、気候保護に関わる施策に十分な資金を振り向けることができなくなっている。


そのため、交通において電気自動車を、建物においてヒートポンプを普及させるための補助金を大幅にカットせざるを得なった。その結果ドイツでは現在、電気自動車とヒートポンプがなかなか普及しない状況となっている。保守系野党は、ガソリン車とディーゼル車の維持を求めてキャンペーンさえはじめている。


製鉄や化学産業においてグリーン水素を使うための技術移転にも十分な補助を提供できず、再エネで発電された電気で国内で水素を製造するプラントの建設が遅れている。グリーン水素を輸入するにしても、そのためのインフラの整備も遅れている現状だ。


結局ドイツでは、脱炭素社会に向けた技術改革、社会改革に必要な資金不足が深刻になっている。


さらに、自国で排出した二酸化炭素を相殺するために、他国で排出削減された分を排出権利として排出証書の形で購入できるようにする欧州排出権取引において、二酸化炭素の取引価格が長年上がらないため、燃料価格の高い天然ガスを使わずに石炭で火力発電して、排出権取引で排出権証書を購入してもコスト高になっていない。この問題も、ドイツで脱炭素化が進まない要因となっている。


ドイツの気候保護法は、政府が前年の成果をもとに順次、政府の気候変動対策を更新して次の気候保護計画を立案し、政府の目標を、段階的に達成することが規定されている。そのため政府は第三者機関として気候問題専門家協議会を設置し、政府の気候変動対策に対して順次見解を求めることになった。


(2023年6月05日)
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関連リンク:
気候問題専門家協議会の公式サイト(ドイツ語)
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